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・・・宇宙の一端に生るれば死はいずこかの片すみにかがまりてひややかに見にくき姿をかくす死のひそむ宇宙の一隅は永劫にもだしあざ笑い大鎌の偉大なる閃きは夜々毎に生れ返り生き変りて地熱のとどろきと創造の力とには向いて・・・
宮本百合子
「片すみにかがむ死の影」
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・・・しかし、文学を生もうと欲する思いの根柢には、つねに今まで在るものではないもっと切実な、もっと真実に迫った人間感動をつたえたい衝動があって、その地熱のようなものは、個々の人のあらゆる具体的な血管を通じてじかに歴史の鼓動とともに生きている。・・・
宮本百合子
「時代と人々」