・・・書画骨董を買うことが熱心で、滝田さん自身話されたことですが、何も買う気がなくて日本橋の中通りをぶらついていた時、埴輪などを見附けて一時間とたたない中に千円か千五百円分を買ったことがあるそうです。まあすべてがその調子でした。震災以来は身体の弱・・・ 芥川竜之介 「夏目先生と滝田さん」
・・・ 博士は、眼鏡の中の目を細くしながら、「君には、埴輪がいいだろう。東京へ帰ったら、一ついい模型をさがしてあげましょう。」といいました。 信吉は、埴輪ときいて、いつか雑誌に載っていた、白い馬に乗った紅い人形を思い出しました。それは・・・ 小川未明 「銀河の下の町」
埴輪というのは、元来はその言葉の示している通り、埴土で作った素焼き円筒のことである。それはたぶん八百度ぐらいの火熱を加えたものらしく、赤褐色を呈している。用途は大きい前方後円墳の周囲の垣根であった。が、この素焼きの円筒の中には、上部を・・・ 和辻哲郎 「人物埴輪の眼」
出典:青空文庫