・・・と同様な静的な画面をつないで行く手法が目につく。堰堤工事の起重機や汽車の運動は、見ているとめまいを起こすほどであるが、しかしその編集法はやはり静的で動的でない。 冒頭のドニエプル河畔の茫漠たる風景も静的である。こういう自然の中に生まれた・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・全国至るところにある発電所の堰堤のどれかが、たとえば大地震のためにこわれたら、その時には人間の弱さがはっきりわかるであろう。気の狂った動物園の象ぐらいの事ではすまない。 道ばたの白樺の樹皮を少しはがしてよく見ると、実に幾層にも幾層にも念・・・ 寺田寅彦 「軽井沢」
・・・水電の堰堤が破れても同様な犠牲を生じるばかりか、都市は暗やみになり肝心な動力網の源が一度に涸れてしまうことになる。 こういうこの世の地獄の出現は、歴史の教うるところから判断して決して単なる杞憂ではない。しかも安政年間には電信も鉄道も電力・・・ 寺田寅彦 「天災と国防」
・・・ 午前五時、午前九時、正午十二時、午後三時、午後六時には取入口から水路、発電所、堰堤と、各所から凄じい発破の轟音が起った。沢庵漬の重石程な岩石の破片が数町離れた農家の屋根を抜けて、囲炉裏へ飛び込んだ。 農民は駐在所へ苦情を持ち込んだ・・・ 葉山嘉樹 「坑夫の子」
出典:青空文庫