・・・ 即ち一は此の生活の根柢の何であるかを問わず、只管に日常生活の中に経験と感覚とを求めて自我の充実を希い、一は色彩的な、音楽的な生活の壊滅、死に対する堪えがたき苦悶を訴えんとする二つが出て来ると思う。そして其れ等の何れの芸術に於ても此を一・・・ 小川未明 「絶望より生ずる文芸」
・・・――こんなに弾圧が強く、全部の組織が壊滅してしまったとき、この遺族のお茶の集まりだって又新しく仕事をやって行く何かの足場になるのではないか、さすがしっかりものの窪田さんがそんな風に考えてのことらしいの。 その日は十人位の母たちや細君が集・・・ 小林多喜二 「母たち」
・・・そうして克服し得たつもりの自然の厳父のふるった鞭のひと打ちで、その建設物が実にいくじもなく壊滅する、それを眼前に見ながら自己の錯誤を悟らないでいる、といったような場合が近ごろ頻繁に起こるように思われる。昭和九年十年の風水害史だけでもこれを実・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・ そのような律動のある相が人間肉体の生理的危機であって不安定な平衡が些細な機縁のために破れるやいなや、加速的に壊滅の深淵に失墜するという機会に富んでいるのではあるまいか。 このような六ヶしい問題は私には到底分りそうもない。あるいは専・・・ 寺田寅彦 「厄年と etc.」
・・・その軍隊が壊滅した時、軍隊は同じその残虐さで数十万の人々をジャングルや山嶽の間にすてて餓死させ、白骨としました。 アジアの姉妹たちよ。そして日本の女性たちよ。アジアの地図の大半の土地からは、わたしたちが愛した者の最期のうめきがつたわって・・・ 宮本百合子 「新しいアジアのために」
・・・フランスやドイツの人民は、今日の壊滅におちいった心理的な原因として、二つの国の間にある、伝統的なさまざまの偏見を、戦争商売人に利用されたのだった。日本の人民が明治二十七八年の戦争以来、敗けない日本軍の幻想と偏見にだまされつづけて、国内のファ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第八巻)」
・・・ 一九三三年の春、プロレタリア文化団体が壊滅させられた後、ファシズムに抗する人民戦線の問題、文学における能動精神がフランスから紹介されたが、近代の市民生活の歴史をもたず、封建保守の傾きのつよい当時の日本の作家の雰囲気の中には、いつも、こ・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・何故なら、旧い日本は一九四五年八月十五日にわれわれの内と外とで音たかく壊滅したはずだった。それだのに、きょうのわたしたちの現実にからみついて棲息している旧いものの力はどうだろう。それがいっそういとわしいことには、民主的だとか新しい日本の建設・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・れてダラ幹ばかりのこされた東交の中にでも、いろいろなやりかたでその活動を年中警察に妨害され苦境にいる無産者托児所の中にでも人民が自分たちの生活と職場を守り、権力とたたかってゆこうとしている意欲は決して潰滅しきっているのでないことを描こうとし・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
・・・ファジェーエフの「壊滅」、ショーロホフの「静かなドン」などはよい作品だが、国内戦は局部的に扱われているのである。 では、新しいコムソモールの生活を描くか。それは明かに要求されている。若い読者はすべて、そういう作品の現れるのを待っている。・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
出典:青空文庫