・・・と云いながら、まだ肩や腰が痛い位で壮健で居る自分の体が嬉しい様に微笑んで居る。非常におだやかに来る人もなく、ぼんやりと大晦日が更けて行くのでいつもよりのびやかに次の年を迎える気持が嬉しい。 非常に天気が良い。・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・故に壮健な散文家となる希望も、その苦悩そのものの火にしかないわけである。そしてこの苦悩の重圧は、人々をひしぐか鍛えるか二つに一つしか返事を出さない。 ツワイクがドストイェフスキー論の中に言っているとおり、「ワイルドがその中で鉱滓とな・・・ 宮本百合子 「バルザックについてのノート」
・・・明治の精神が持っていた壮健な常識の響は福沢諭吉の言葉をとおして、これらの文章のうちにも高く鳴っているのである。 そもそも福沢諭吉が、「女大学」を読んで、それに疑問を抱き、手控えをはじめたのは、彼が二十五歳で大阪から江戸へ出て来たときから・・・ 宮本百合子 「三つの「女大学」」
出典:青空文庫