・・・財産とともに道徳心をも失った貧民と売淫婦との急激なる増加は何を語るか。はたまた今日我邦において、その法律の規定している罪人の数が驚くべき勢いをもって増してきた結果、ついにみすみすその国法の適用を一部において中止せねばならなくなっている事実(・・・ 石川啄木 「時代閉塞の現状」
・・・どでは一種のアカデミックな社交性というようなもので綺麗ごとに共学されていて、たとえばアメリカの大学の社会科の女子学生と男子学生とが、夏期休暇中の共同研究として、浮浪者の生活調査をやるとか、女子の失業と売淫生活に堕ちてゆく過程の調査だとか、そ・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・経済矛盾の大きい社会ほど、売淫は多様広汎になって来る。ベルリンに、日本に、売笑のあらゆる形態が生れ出ていることは、ファシズムの残忍非道な生活破壊の干潟の光景である。独善的に民族の優越性や民族文化を誇張したファシズム治下の国々が、ほかならぬそ・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・ 三畳足らずの監房に女が六人坐っている。売淫。堕胎。三人の年とった、ヒスイの簪の脚で頭を掻いては絶えず喋っている媒合。自分。気違いがそこへ入って来た。ふらつき歩いた土足のまま何と云っても足を洗わない。着物の上にネンネコをひっかけ、断・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・放埒をしてよい、のではなくて、結婚という形式における売淫は、人間らしくないこととして拒絶する権利があることを意味している。 結婚の本質をこうしてより人間らしい条件において扱い直そうとするとき、その結婚の清純を守る条件として、離婚の自由が・・・ 宮本百合子 「離婚について」
出典:青空文庫