・・・そのほか、新藤源四郎、河村伝兵衛、小山源五左衛門などは、原惣右衛門より上席でございますし、佐々小左衛門なども、吉田忠左衛門より身分は上でございますが、皆一挙が近づくにつれて、変心致しました。その中には、手前の親族の者もございます。して見れば・・・ 芥川竜之介 「或日の大石内蔵助」
・・・こんなものが食えるものかと、お君の変心を怒りながら、箸もつけずに帰ってしまった。そのことを夕飯のとき軽部に話した。 新聞を膝の上に拡げたままふんふんと聴いていたが、話が唇のことに触れると、いきなり、新聞がばさりと音を立て、続いて箸、茶碗・・・ 織田作之助 「雨」
変心 文壇の、或る老大家が亡くなって、その告別式の終り頃から、雨が降りはじめた。早春の雨である。 その帰り、二人の男が相合傘で歩いている。いずれも、その逝去した老大家には、お義理一ぺん、話題は、女に就いての、極めて不きんし・・・ 太宰治 「グッド・バイ」
・・・ずっと前から手紙をかくときのことをいろいろ考えていたのに、いざ書くとなると、大変心が先に一杯になって、字を書くのが窮屈のような感じです。 先ず、心からの挨拶を、改めて、ゆっくりと。―― 三日におめにかかれた時、自分で丈夫だと云ってい・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
出典:青空文庫