・・・いかにも関東の古寺らしく、大まかに寂び廃れた趣きよし。関西の古寺とは違う。雰囲気が。 小僧夕方のお勤め。木魚の音。やがて背のかがんだ年よりの男が別な小僧をつれて出て来、一方の大きい浅草観音のと同じ扉をギーとしめ、こっちに来て賽銭箱をあけ・・・ 宮本百合子 「金色の秋の暮」
・・・社会主義リアリズムの方法は自身の経験のうちで意識して試みられた例に乏しいばかりか、一般にその方法の機能について、更にその機能の細部について、まだ見きわめられていない。大まかに、社会と人間の有機的な諸関係をその歴史の積極な方向――社会主義の展・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・日本の人民のための文学の狼火として存在したプロレタリア文学運動の歴史と、文学についてのその基本的認識が、よしやどんなに大まかなものであり、不幸な傷をうけているにしろ、絶対的に存在価値をもっている所以である。 三・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・云々をふくむ大まかな一章のうちにも感じとれるし「足ぶみ状態と第二段階」の、かみわけて云われている勤労者の「意識的努力・観念的たかまり」についての部分などにも、云われるべくして云われずにあるものが感じられる。「勤労者文学」の規定はその自然発生・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・愚な只今までの誤り――名づけて経験と云うものでどうやら人殺しもせず泥棒もしないで生活して居ることが出来るほど大まかな頭で逃げてからあとの事を考えた。「自分の過去の歴史なんかは一寸もしらないものの中で根かぎり働く人にうまくとり入る。・・・ 宮本百合子 「どんづまり」
・・・ 何より彼より、一番大まかで、寛容でなければならない筈の主人が、重箱の隅ほじりなので、事実以上に種々思って居た事が無いでもあるまいと正直なところ思う。 それでも奥さんがピリッとした人なら、するだけの事はうまく感じよくやってのけたかも・・・ 宮本百合子 「二十三番地」
・・・ 貧しいと云っても比較的東京の貧乏人よりは何かが大まかで、来た者に何かは身になるもの、例えば薯の煮たの、豆のゆでたの、餅等と云うものを茶菓子に出すので、家から家へと泳いで廻って居るこの人等は三度に二度は他人の家で足して居られるので、孤独・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・ 何と云う痛ましい事かと思うと、彼の人の大まかな、おっとりした物ごしが一々目に見えて来る。 根気が強くて、どんな細かしい事でもコツコツとやって居た。 何だか生え際の薄い様な人であったがなどとも思われる。 低いどっちかと云えば・・・ 宮本百合子 「ひととき」
・・・ 即ち一つのタイプはモーパッサンがこの小説を書いた時代と一九五〇年の世界――その中でのフランス、その中での日本の歴史は非常に変化して来ていて、社会の現実はちがっていることには大して注目しないで、ごく大まかに、やっぱり女の人生ってどこの国で・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
出典:青空文庫