・・・なんでも昔寄宿舎で浜口雄幸、溝淵進馬、大原貞馬という三人の土佐人と同室だか隣室だかに居たことがある、そのときこの三人が途方もない大きな声で一晩中議論ばかりしてうるさくて困ったというのである。 この三人の方々に聞いてみたら何かしら学生時代・・・ 寺田寅彦 「埋もれた漱石伝記資料」
・・・京都大阪辺の富豪家に虚弱なる子あれば、之を八瀬大原の民家に託して養育する者ありと言う。田舎の食物の粗なるは勿論のことなれども、田舎の物を食して田舎風に運動遊戯すれば、身体に利する所は都会の美食に勝るものあるが故なり。左れば小児を丈夫に養育せ・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・かえりに京都へ寄り、急に思い立って大原へ行った。これはまた、何と低い新緑の茂み! 背の低い樹々が枝から枝へ連って山々、谿々を埋めている。寒い土地の初夏という紛れない感じで感歎した。 青島は、なかなか有名だ。大抵の人が知っていた、是非行っ・・・ 宮本百合子 「九州の東海岸」
・・・倉敷には有名な大原コレクションがありますが、この倉敷で文化講演会があっても、総同盟あたりが締めつけにしている工場では、工場というところは働くためのところです、とポスター一つはせらず、講演会へ娘たちを出してよこしません。すべての人は教育をうけ・・・ 宮本百合子 「社会と人間の成長」
・・・芝木好子、大原富枝そのほか幾人かのひとがそれぞれ婦人作家としての短くない経験にたって、明日に伸びようとしているのであるが、婦人の生活と文学の道とは、今日も決して踏みやすくはされていない。女が小説をかくというそのことに対する非難の目は和らげら・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
出典:青空文庫