・・・ ちょうどそのころ沙車の町はずれの砂の中から、古い沙車大寺のあとが掘り出されたとのことでございました。一つの壁がまだそのままで見附けられ、そこには三人の天童子が描かれ、ことにその一人はまるで生きたようだとみんなが評判しましたそうです。或・・・ 宮沢賢治 「雁の童子」
・・・ 品川の伯父さんは、良人が留守な姪の子たちを丈夫にしてやろうと、大磯の妙大寺という寺の座敷を一夏借りて、皿小鉢のようなものまで準備された。 西村の祖母、母、子供三人の同勢はそこへ出かけて、子供らは、生れてはじめて海岸の巖の間で波と遊・・・ 宮本百合子 「白藤」
・・・天祐和尚の逗留中に権兵衛のことを沙汰したらきっと助命を請われるに違いない。大寺の和尚の詞でみれば、等閑に聞きすてることはなるまい。和尚の立つのを待って処置しようと思ったのである。とうとう和尚は空しく熊本を立ってしまった。 天祐和尚が・・・ 森鴎外 「阿部一族」
出典:青空文庫