・・・昨今出版された大部な切支丹資料研究は、插画を見た丈でも益されることが多大だ。鹿児島出身。三時間に亙って懇切に私の質問に答えたり、書庫を見せられたりした。書庫には、出島和蘭屋敷の絵巻物、対支貿易に使用された信牌、航海図、きりしたんころびに関す・・・ 宮本百合子 「長崎の一瞥」
・・・『改造』へ一年に四度位の割で四五十枚から二百枚位まで時々載せてゆき、単行本にする時に全篇すっかり手を入れて大部ちぢめました。 当時はもう蔵原惟人の芸術論等が雑誌に出始めて居り、プロレタリア文学運動がそろそろ緒につきはじめていた頃でしたが・・・ 宮本百合子 「「伸子」について」
・・・たとえばあの大部なアンナ・カレニナのどのページを取ってみても、私は極度に緊縮と充実とを感じるのである。 ドストイェフスキイを冗漫だとする批評はかなり古くからあるが、私は冗漫を感じない。内容がはち切っているから。――もっとも技巧から言えば・・・ 和辻哲郎 「生きること作ること」
出典:青空文庫