・・・しかしグリムの方則のような簡単明瞭なものは大陸で民族の大集団が移動し接触する時には行なわれるとしても、日本のような特殊な地理的関係にある土地で、小さな集団が、いろいろの方面から、幾度となく入り込んだかもしれない所では、この方則はあるにはあっ・・・ 寺田寅彦 「火山の名について」
・・・ましてやアフリカ大陸の自然の棲所で撮った河馬の映画となれば猶更のことである。 ある製造工場を見学するにしても、実際の場合は一見雑然とした機械の嵐のように運転する中を案内されて説明を聞いても眼が戸まどいをして視るべき要点を掴まえることが困・・・ 寺田寅彦 「教育映画について」
・・・また大陸塊の縁辺のちぎれの上に乗っかって前には深い海溝を控えているおかげで、地震や火山の多いことはまず世界じゅうの大概の地方にひけは取らないつもりである。その上に、冬のモンスーンは火事をあおり、春の不連続線は山火事をたきつけ、夏の山水美はま・・・ 寺田寅彦 「災難雑考」
・・・ウェーゲナーの大陸漂移説や、最近ジョリーの提出した、放射能性物質の熱によって地質学的輪廻変化を説明する仮説のごときも、あながち単なる科学的ロマンスとして捨つべきものでないと思われる。今回地震の起因のごときも、これを前記の定説や仮説に照らして・・・ 寺田寅彦 「地震雑感」
・・・ウェーゲナーの大陸移動説では大陸と大陸、また大陸と島嶼との距離は恒同でなく長い年月の間にはかなり変化するものと考えられる。それで、この国曳きの神話でも、単に無稽な神仙譚ばかりではなくて、何かしらその中に或る事実の胚芽を含んでいるかもしれない・・・ 寺田寅彦 「神話と地球物理学」
・・・ 日露戦役の際でも我軍は露兵と戦うばかりでなく、満洲の大陸的な気候と戦わなければならなかった。日本海の海戦では霧のために蒙った損害も少なくなかった。こういう場合に気象学や気候学の知識が如何に貴重であるかは世人のあまり気の付かぬ事である。・・・ 寺田寅彦 「戦争と気象学」
・・・ これらの根本的決定因子を知るには一体どこを捜せばよいかというと、それはおそらく颱風の全勢力を供給する大源泉と思われる北太平洋並びにアジア大陸の大気活動中心における気流大循環系統のかなり明確な知識と、その主要循環系の周囲に随伴する多数の・・・ 寺田寅彦 「颱風雑俎」
・・・紅海は大陸の裂罅だとしいて思ってみても、眼前の大自然の美しさは増しても減りはしなかった。しかしそう思って連山をながめた時に「地球の大きさ」というものがおぼろげながら実認されるような気がした。四月二十八日 朝六時にスエズに着く。港の片・・・ 寺田寅彦 「旅日記から(明治四十二年)」
比較的新しい地質時代に日本とアジア大陸とは陸続きになっていて、象や犀の先祖が大陸からの徒歩旅行の果に、東端の日本の土地に到着し、現在の吾々の住まっているここらあたりをうろついていたということは地質学者の研究によって明らかに・・・ 寺田寅彦 「短歌の詩形」
・・・私たちは、はじめはこれはよほど費用をかけて大陸から頼んで来たんだなと思いましたが、あとで聞きましたら、あの有名なスナイダーが私たちの仲間だったんです。スナイダーは、自分のバンド(尤を、そっくりつれてやはり一昨日、ここへ着いたのだそうです。と・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
出典:青空文庫