・・・ この重要な仕事に連関して天文や気象に関する学問の胚芽のようなものが古い昔にすでに現われはじめ、また巫呪占筮の魔術からもいろいろな自然科学の先祖のようなものが生まれたというのは周知のことである。このように「自然」を相手の仕事から自然の研・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・その絵はがきの中に天文や地文に関する図解や写真をコロタイプで印刷した一組のものが目についた。取り上げてよく見ると、それはずいぶん非科学的な、そして見る人に間違った印象や知識を与えるものであった。なかんずく月の表面の凹凸の模様を示すものや太陽・・・ 寺田寅彦 「断水の日」
・・・そして近刊の天文の雑誌を調べてみるとそれが火星だという事がすぐに判った。星座図を出して来てあたってみるとそれは処女宮の一等星スピカの少し東に居るという事がわかった。それでその図の上に鉛筆で現在の位置をしるし、その脇へ日附をかいておいて、この・・・ 寺田寅彦 「小さな出来事」
・・・(改造社俳句講座第七巻、後藤 季題の中でも天文や時候に関するものはとにかく、地理や人事、動物、植物に関するものは、時を決定すると同時にまた空間を暗示的に決定する役目をつとめる。少なくもそれを決定すべき潜在能をもっている。それで俳句の作者・・・ 寺田寅彦 「俳諧の本質的概論」
・・・色々の集会もここであった。天文関係の人が寄ったときにその頃発見された新星ノヴァ・ペルセイの話が出た。新星と豊国がその時から結合した。磁力測量に使う磁石棒の長さをミクロンまで精密に測ろうとして骨折った頃にもよく豊国の牛肉を食った。磁石と豊国と・・・ 寺田寅彦 「病院風景」
・・・ 純粋な科学の各種の方面でも物理学を応用しあるいは物理学の研究方法を転用する事が盛んになる。天文、気象、地質、海洋等に関する自然科学研究に物理学応用の発達して行くのはむしろ当然の事であろうが、普通の意味における物質とはよほど縁の遠い生理・・・ 寺田寅彦 「物理学の応用について」
・・・ また、一昨年一二月八日に金星の日食ありて、諸外国の天文家は日本に来て測量したり。この時において、学者は何の観をなしたるか。金の魚虎は墺国の博覧会に舁つぎ出したれども、自国の金星の日食に、一人の天文学者なしとは不外聞ならずや。 また・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・第四、数学 指を屈して物の数を計るをはじめとし、天文・測量・地理・航海・器械製造・商売・会計、ことごとく皆、数学のかかわらざるものなし。かつ数学を知らざる者は、その学識を実用に施すときにあたりて、議論つねに迂闊なり。・・・ 福沢諭吉 「学校の説」
・・・なお進て、天文地質の論を聞けば、大空の茫々、日月星辰の運転に定則あるを知るべし。地皮の層々、幾千万年の天工に成りて、その物質の位置に順序の紊れざるを知るべし。歴史を読めば、中津藩もまたただ徳川時代三百藩の一のみ。徳川はただ日本一島の政権を執・・・ 福沢諭吉 「旧藩情」
・・・この際や読書訳文の法、ようやく開け、諸家翻訳の書、陸続、世に出ずるといえども、おおむね和蘭の医籍に止まりて、かたわらその窮理、天文、地理、化学等の数科に及ぶのみ。ゆえに当時、この学を称して蘭学といえり。 けだしこの時といえども、通商の国・・・ 福沢諭吉 「慶応義塾の記」
出典:青空文庫