一 暦の上の季節はいつでも天文学者の計画したとおりに進行して行く。これは地球から見た時に太陽が天球のどこに来ているかという事を意味するだけの事であるから、太陽系に何か大きな質量の変化が起こるか、重力の方・・・ 寺田寅彦 「春六題」
・・・仮りに恒星の全質量が天球上に一様に分布されているとすれば総和は零となる。これに反して恒星が地球を通ずる一直線上に羅列していたらばどうであろうか。もし各個の質量が同一で間隔も同一ならば、これらの引力の総和は丁度前に出した収斂級数で表わされ従っ・・・ 寺田寅彦 「方則について」
・・・ピタゴラス派の天球運動の諧音です」「あら、なんだかまわりがぼんやり青白くなってきましたわ」「夜が明けるのでしょうか。いやはてな。おお立派だ。あなたの顔がはっきり見える」「あなたもよ」「ええ、とうとう、僕たち二人きりですね」・・・ 宮沢賢治 「シグナルとシグナレス」
・・・空もいつかすっかり霽れて、桔梗いろの天球には、いちめんの星座がまたたきました。 雪童子らは、めいめい自分の狼をつれて、はじめてお互挨拶しました。「ずいぶんひどかったね。」「ああ、」「こんどはいつ会うだろう。」「いつだろう・・・ 宮沢賢治 「水仙月の四日」
出典:青空文庫