・・・東京の浅草のまるで濁った寒天のような空気をうまく太平洋の方へさらって行って日本アルプスのいい空気だって代りに持って行ってやるんだ。もし僕がいなかったら病気も湿気もいくらふえるか知れないんだ。ところで今日はお前たちは僕にあうためにばかりここへ・・・ 宮沢賢治 「風野又三郎」
・・・その東に、太平洋に弓なりにかかって、わたしたちの祖国日本があります。 けれども、今日アジアの地図の中に見る日本は、わたしたちの心を苦痛でみたします。ソヴェト同盟の国境、朝鮮、満州をふくむ中華人民共和国、ビルマ、シャム、マライ、印度支那、・・・ 宮本百合子 「新しいアジアのために」
・・・ 青島も、確に珍しい見物の一つではあろう。太平洋に面した海岸の巖石が、地質の関係で、亀甲形や菊皿のような形に一面並んでいる、先に南洋の檳榔樹、蘭科植物などが繁茂した小島が在る。その巖の特殊な現象と、その小島に限って南洋植物が生育して・・・ 宮本百合子 「九州の東海岸」
・・・鵜原は太平洋のナポリと或人が云ったので、令子はその巖と海との月を心に描いて来たのであった。 鵜原で汽車を降り、宿を駅夫に訊いたら、「あの巡査さんが途中まで行くから、一緒に行らっしゃい」 左手に黒々と巖山が聳え、駅を出てそこを歩い・・・ 宮本百合子 「黒い驢馬と白い山羊」
・・・しかも三月八日に築地小劇場で日本プロレタリア文化連盟が参加した三・一五記念の汎太平洋プロレタリア文化挨拶週間の催しの一つとして「働く婦人の夕べ」をやった時などは、開会一分で、中止、解散、であった。自分がやっと「今日ここに集っていらっしゃる方・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・ 太平洋の上に横たわる細長い小さい島の日本、そこに生まれ、苦しみ、破壊の中から人民の国日本を建設しようとしている婦人大衆の敬慕に満ちた挨拶をおくります。〔一九四七年三月〕 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・をよんでもわかるとおり、「ミッドウェイ洋上、五分間の手遅れが太平洋全海戦の運命を決した」と五分早かったらという調子で、海戦の状況がこまかく専門的に記されていることである。元海軍中将であるこの筆者は、その達筆な戦記のなかにきわめて効果的に自然・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・日本という一つの島国がアジアに向って太平洋のはじにつらなっているという自然の現象は、日本が人類平和に対して害毒の島とされなければならない宿命を語ることではないのである。 日本の人民そのもののうちに平和を守ろうとしている誠意を信じることが・・・ 宮本百合子 「この三つのことば」
・・・ 一方から見ると、誠に当を得たように思われる文化政策なども、軍事教練に反対した汎太平洋婦人平和会議の決議に反対の見解を示している人々の意見とてらし合わせてみて始めて、真意が了解されるというものであろう。 現在われわれが住んでいる社会・・・ 宮本百合子 「今日の文化の諸問題」
・・・ こないだ地図見たら太平洋の真中があんまり明きすぎてるからあすこへ一杯国を作ってやろうや。 ね、そうしたら随分面白いだろうなあ。 手足をピンピン振り動かして跳ね廻る程面白がり始めました。 遠くの方をながめながら、・・・ 宮本百合子 「小さい子供」
出典:青空文庫