・・・はだかになって、生徒といっしょに白い岩の上に立っていましたが、まるで太陽の白い光に責められるように思いました。全くこの人は、救助区域があんまり下流の方で、とてもこのイギリス海岸まで手が及ばず、それにもかかわらず私たちをはじめみんなこっちへも・・・ 宮沢賢治 「イギリス海岸」
・・・海が上の方に見えるどころか、誰だって自分の瞼の裏が太陽に透けてどんなに赤いかそれだけ見るのがやっとなのだ。が、こわいような、自分の身体がどこで止るか、止るまで分らず転がり落ちる夢中な感じは、何と痛快だろう! 転がれ! 転がれ! わがからだ!・・・ 宮本百合子 「明るい海浜」
・・・「こないだ太陽を見たら、君の役所での秩序的生活と芸術的生活とは矛盾していて、到底調和が出来ないと云ってあったっけ。あれを見たかね。」「見た。風俗を壊乱する芸術と官吏服務規則とは調和の出来ようがないと云うのだろう。」「なるほど、風・・・ 森鴎外 「あそび」
・・・ 若者は荷物の下から、眼を細めて太陽を眺めると、「ちょっと暑うなったな、まだじゃろう。」 二人は黙ってしまった。牛の鳴き声がした。「知れたらどうしよう。」と娘はいうとちょっと泣きそうな顔をした。 種蓮華を叩く音だけが、幽・・・ 横光利一 「蠅」
・・・が、事実問題として、ああいう美しさが六月の太陽に照らされたほの暑い農村の美しさのすべてであるとは言えないであろう。小林氏にしてもあれ以外に多くの色や光や運動の美しさを認めたであろう。しかし氏はその内から一の情趣をつかんだ。そうしてそれを描き・・・ 和辻哲郎 「院展日本画所感」
出典:青空文庫