・・・ 附録、 千葉県の保田に一ヵ年契約で月六円の家があり、いねちゃんの子供らのために共同でかりました。学校の休のうちに子供らは出かけます。私は毎日大勉強で、本を運ぶのが面倒故、一かた今の仕事が片づいてから。七十銭位の本になります[自注13]・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・治上の権利をもったからといって女が幸福にならず、良人や子供たちを幸福にするものでもないことは自明だけれど、この社会にあって幸福を守り、つくり出してゆく条件の可能を増してゆくためには、一定の社会的評価と契約の表現として、政治上の力は女にとって・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・それだからこそ、映画女優を志願して、故郷のオクラホマからハリウッドへは行かずニューヨークへ出たミス・スチュアートが、メトロ映画会社に認められて契約を結んだ、というような小事実が、僥倖の一つとして日本の読者にまで写真入りで伝えられるのである。・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・そういう事情があると思いもそめず、家賃が手頃なのや一人暮しに快適な間どりの工合やらにひかれて契約した。そして引越したら、二三日で、溌剌騒然たる小学校の賑わいが、別して朗々たるラウド・スピーカアの響きとともに、朝から夕刻まで、崖上に巣をかけた・・・ 宮本百合子 「田端の汽車そのほか」
・・・しかも、一方に、急テンポな近代資本主義化が進んでいて封建的にきりはなされ、格式だおれな心理になりがちな俳優たちの生活が、欧米式自由競争、契約の方法にきりかえられようとしている。そういう社会的な波瀾に対して、俳優の生活は、どんな一致した結集力・・・ 宮本百合子 「俳優生活について」
・・・集団農場から箇別農場へ、強制労働から自由契約労働へ転向した。これは重大な敗北だ。ソヴェト・ロシアのことなら何でもいいと云うかもしれないが、五ヵ年計画について気焔をはいていたお前はこの失敗について何というか?」ソヴェト同盟の五ヵ年計画を中條と・・・ 宮本百合子 「反動ジャーナリズムのチェーン・ストア」
・・・山本有三氏と読者との結びつきは、どこか只面白い小説という以上のものに対する暗黙の契約の上に立っているように見えるのである。そして、このことは、今日の社会に於ける一社会人としての山本氏に対する信用をも醸し出しているのである。 この間、志賀・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
出典:青空文庫