・・・そンでまア巧いこと乳にありついて、餓え死を免れたわけやが、そこのおばはんいうのが、こらまた随分りん気深い女子で、亭主が西瓜時分になると、大阪イ西瓜売りに行ったまンま何日も戻ってけえへんいうて、大騒動や。しまいには掴み合いの喧嘩になって、出て・・・ 織田作之助 「アド・バルーン」
・・・その出品は重に習字、図画、女子は仕立物等で、生徒の父兄姉妹は朝からぞろぞろと押かける。取りどりの評判。製作物を出した生徒は気が気でない、皆なそわそわして展覧室を出たり入ったりしている。自分もこの展覧会に出品するつもりで画紙一枚に大きく馬の頭・・・ 国木田独歩 「画の悲み」
・・・となれば、女は欠伸をしますから……凡そ欠伸に数種ある、その中尤も悲むべく憎くむ可きの欠伸が二種ある、一は生命に倦みたる欠伸、一は恋愛に倦みたる欠伸、生命に倦みたる欠伸は男子の特色、恋愛に倦みたる欠伸は女子の天性、一は最も悲しむべく、一は尤も・・・ 国木田独歩 「牛肉と馬鈴薯」
・・・涅槃に達しても、男子は男子であり、女子は女子である。女性はあくまで女性としての天真爛漫であって、男性らしくならなければ、中性になるのでもない。女性としての心霊の美しさがくまなく発揮されるのである。 しかしながら涅槃の境地に直ちに達しられ・・・ 倉田百三 「女性の諸問題」
・・・元来子孫の維持と優生という男女協同の任務の遂行が、女子に特別な負荷を要求する以上、男子が女子を保護しなければならないのは当然のことである。しかるに今日においては国法は男子の利益においてきめられ社会は母性と、産児と、未亡人とを保護しない。妊娠・・・ 倉田百三 「婦人と職業」
・・・ 九歳のとき彼のお千代さんという方が女子師範学校の教師になられたそうで、手習いは御教えにならぬことになりました。で、私を何所へ遣ったものでしょうと家でもって先生に伺うと、御茶の水の師範学校付属小学校に入るが宜かろうというので、それへ入学・・・ 幸田露伴 「少年時代」
・・・久しぶりにて女子らしき女子をみる。一体土地の風俗温和にていやしからず。中学は東京の大学に似たれど、警察署は耶蘇天主堂に似たり。ともかくも青森よりは遥によろしく、戸数も多かるべし。肴町十三日町賑い盛なり、八幡の祭礼とかにて殊更なれば、見物した・・・ 幸田露伴 「突貫紀行」
・・・こうなると、どうも、男よりも女子のほうが、しっかりしている。それでは、どうか、よろしくたのむよ。」「はあ、承知しました。」たのもしげに、首肯きます。 私は、ほっとして、それでは帰ろうかと腰を浮かしかけた途端に、馬小屋のほうで、「・・・ 太宰治 「嘘」
・・・という言葉が閉口で、すぐに眼鏡をかけた女子大学生の姿や、されこうべなどが眼に浮び、やり切れないのです。私があなたのお手紙を読んで、あなたのお考えになっている事が、あなたの言葉と少しの間隙も無くぴったりくっついて立っているのを見事に感じ、これ・・・ 太宰治 「風の便り」
・・・ それから古典教育に関する著者の長い議論があるが、日本人たる吾々には興味が薄いから略する事にして、次に女子教育問題に移る。 婦人の修学はかなりまで自由にやらせる事に異議はないようだが、しかしあまり主唱し奨励する方でもないらしい。・・・ 寺田寅彦 「アインシュタインの教育観」
出典:青空文庫