・・・という作品の、ひねくれない、すなおな、おとなしいまともさに好感をもちました。今日の、あくどい、ジャーナリスティックになりきった、ごみっぽい作品の間に、阿川弘之という人の小説は、表現にしろ、なんでもないようだが、よく感じしめ、見つめた上でのあ・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・ 見かけよりはずっと奥ゆきの深い、いかにも桜木町辺の家らしい二階によったその集りには、非常に好感がもたれた。みんな、生活を知り、この社会で女が自立し、働くということの現実を知っている十五人足らずの人たちであった。なかには幼い娘を膝にのせ・・・ 宮本百合子 「図書館」
・・・ 此から幾年か居る、その家を貸すものに、唯利害関係からではなく、真個に人の世の生きるらしい友情と好感とを以て接して行けると云うことは、特別、家主、店子の関係に於て嬉しく思われたのである。 幾度も本郷、牛込、青山を往復し、家は、遂に我・・・ 宮本百合子 「又、家」
・・・わからないということは、私どもにすらりと受けとられるし、一種の好感も覚える。けれども、わからないならわからないとして、どこまでも自分として納得できるまでわからないで通しているかといえばそうではなくて、半面ではごく常識的な結婚の幸福とか生活の・・・ 宮本百合子 「山の彼方は」
出典:青空文庫