・・・ 日本の島環の成因についてはいろいろの学説がある。しかし日本の土地が言わば大陸の辺縁のもみ砕かれた破片であることには疑いないようである。このことは日本の地質構造、従ってそれに支配され影響された地形的構造の複雑多様なこと、錯雑の規模の細か・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・新しい思想や学説でも、それが多少広く世間に行き渡るころにはもう「流行」はしない事になる。 三 春が来ると自然の生物界が急ににぎやかになる。いろいろの花が咲いたりいろいろの虫の卵が孵化する。気候学者はこういう現象の・・・ 寺田寅彦 「春六題」
・・・ 地球物理学上の近年の問題となっている陸塊の水平移動に関する学説、俗に大陸漂移論と称するものから見た日本陸地の成立、変化、ならびにこれに連関して問題となるべき陸地の昇降、地震、火山現象等を追究するに当たって、しばしば古い過去における水陸・・・ 寺田寅彦 「比較言語学における統計的研究法の可能性について」
・・・植物学者や進化論者に聞いたら何かの学説はあるかもしれないが、それにしても不思議な心持ちがしないではいられない。自分はこのような植物の茂っている熱帯の樹林を想像しているうちにシンガポールに遊んだ日を思い出した。椰子の木の森の中を縫う紅殻色の大・・・ 寺田寅彦 「病室の花」
・・・ばかりの嬰児も代議士を志願してフロックコートを着て政見を発表したり燕尾服を着て交際したりしなければいけない、又小学校の一年生にエービースィーを教えるなら大学校でもなぜ文学より見たる理論化学とか、相対性学説の難点とかそんなことばかりやってエー・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・西欧の文学はその時代において一方にプロレタリア文学の道を拓き、その反面自身の歴史的展開の方向を見失った面では、フロイドの学説に動揺する心理のよりどころを見いだし、心理主義に進んだ。その女流選手であった英国のージニア・ウルフが、こんどの大戦が・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・ 整理された研究材料から、国文学としての組織立った学説、日本文学の発展・変化の内外諸関係を支配し、そして、支配しつづけて今日に及んでいる何かの法則を発見するべき段になって、現在、国文学研究者自身が、その法則を把握するに先ず必要な学者とし・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ダアウィンの学説が、十九世紀イギリス資本主義興隆の科学的裏づけとしてつかわれた如くに。 科学者の社会的基調 昨今の社会情勢は推移して、もはや科学性のそれ以上の発展と支配力の利害とは一致し得なくなって来た。科学に・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・という論文の一部が、文学の本質、ジャンル等についての西洋学説が日本に紹介された最初のものであったということを本間久雄氏著「男女文学史」で知ったことも感興をひいた。明治七年と云えば福沢諭吉は四十一歳、「学問のすゝめ」を出した二年後であり、祖父・・・ 宮本百合子 「繻珍のズボン」
・・・原子学説についてどこまで知っている文学者が、現代にいるだろう。わたしたちは、ほとんど無知である。だけれども、現代のリアリティーとして、ナイロン王デュポンが、水爆王になりつつある過程は明瞭に理解する。マダム・キューリーが一九〇四年のある朝、ア・・・ 宮本百合子 「私の信条」
出典:青空文庫