・・・この先生が学課の単調さに苦しんでいる私の知識慾に流れ口を見出すきっかけをつけてくれられた。ヘッケルの宇宙の謎という本を教えて、文学以外の分野へ読書の力をひろめても下すった。 こういう時代を思いかえすと、私は震災で焼けてしまった昔のお茶の・・・ 宮本百合子 「青春」
・・・しゃんとした友達や、面白い学課や……。 古ぼけて歪み、暗くて塵だらけだった建物の中で、餓え渇いて、ガツガツと歯をならしていたあらゆる感情、まったくあらゆる感情とほか云いようのない種々様々な感情の渇仰が、皆一どきに満たされ、潤されるのを感・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・ 先生が、教える学課を何かの機縁にして、一人一人の生徒が自己を啓発して行くように努力されたことは、公平に、時を惜まず、箇人的な質問に応じられたことでも明であった。 学課についてでも、課外の読書に関してでも、或はもっとプライヴェー・・・ 宮本百合子 「弟子の心」
・・・ロザリーは、学校を終ったばかりのヒルダから初歩の学課を習い始めているのですが、ヒルダは、ロザリーにお稽古帳をあずけたまま、姉のフロラと窓際で、ひそひそ何か話しています。ロザリーは、どうも落附かなく、先生を傍にとられ、物足りません。自分からヒ・・・ 宮本百合子 「「母の膝の上に」(紹介並短評)」
・・・「変なのね、私たち誰だって電車の中でよんだ学課以外の本のおかげで、どうやら読書力がついたんだわ」「そのひとには、往復の電車で本をよめるというのがどんなに勤めているもののよろこびと慰安だか分ってないんですのね、きっと」 いくらか難・・・ 宮本百合子 「二人いるとき」
私は母からも又学課だけを教えて呉れる先生と云う人からも「妙な子」、「そだてにくいお子さん」と云われて居る。自分では何にも変なお子さんでも妙な子でもないつもりでもはたからそうして呉れるんでよけいにそうなったのかも知れない。私・・・ 宮本百合子 「妙な子」
・・・けれども、小さい子供の真の価値と学課の点数の問題にくいちがいを見て苦しむ若い女先生の心情は読む者に感銘を与えます。こういう軟かく瑞々しい感情をもっている方が、先生として報告文学の要点をのみこんで、記録をつくったらば、意味のあるものが書けそう・・・ 宮本百合子 「ルポルタージュの読後感」
・・・その辛さは、自身の成長過程に不調和が生じているばかりでなく、その成長期の動乱を統一する力として外部にある学課、ことに数学その他が十分若く不安な精神を掴みまとめる魅力をもっていないことからも、凌ぎにくいものとして経験されるのだと思われる。・・・ 宮本百合子 「私の科学知識」
・・・学校の空気と学課が、自分をしっかりと掴えない。苦しく無意味に思える。そこで、上野の図書館へ行ってしまう。女学校の四年生になって、学校の比較的豊富な図書館がつかえるようになるまで、わたしの知識慾は、惨めな状態におかれた。図書館と、うちで買う文・・・ 宮本百合子 「私の青春時代」
出典:青空文庫