・・・そのせいでもあるまいが当時ドイツの風俗、人情、学風に対する色々な不満を聞かされた記憶がある。しかし英国へ渡ってからは彼の国の風物がすっかり気に入って喜んでいたようであった。それが後年盲腸の手術を受けてからすっかり能くなった。晩年には始終神経・・・ 寺田寅彦 「工学博士末広恭二君」
・・・どちらがいいか悪いかは別問題であるが、昔の人選法も考えようによってはかえって合理的であるかもしれない。学風の新鮮を保ち沈滞を防ぐためにはやはりなるべく毛色のちがった人材を集めるほうがかえっていいかもしれないのである。同じことは他のあらゆる集・・・ 寺田寅彦 「相撲」
・・・そういう事を研究することを喜ばないような日本現時の不思議な学風がそういう研究の出現を阻止しているのではないかと疑われる。 余談ではあるが、先日田舎で農夫の着ている簔を見て、その機構の巧妙と性能の優秀なことに今さらに感心した。これも元はシ・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・しかしもしも万一これら質的研究の十中の一から生まれうべき健全なるものの萌芽が以上に仮想したような学風のあらしに吹きちぎられてしまうような事があり、あるいは少しの培養を与えさえすればものになるべきものを水をやらないために枯死させてしまうような・・・ 寺田寅彦 「量的と質的と統計的と」
・・・年月を経るにしたがい学風の進歩することあらば、その体裁もまた改まるべし。 明治三年庚午三月慶応義塾同社 誌 福沢諭吉 「学校の説」
ある人いわく、慶応義塾の学則を一見し、その学風を伝聞しても、初学の輩はもっぱら物理学を教うるとのこと、我が輩のもっとも賛誉するところなれども、学生の年ようやく長じて、その上級に達する者へは、哲学・法学の大意、または政治・経・・・ 福沢諭吉 「経世の学、また講究すべし」
・・・日本の芸術の伝統における粋の諸要素を、幾何学風な図解まで添えて説明しようと試みられているのであるが、その科学的分析の努力を氏自身が結論において謂わば自ら放棄しているところは興味がある。我から粋を味到した者としての自覚から氏は粋の研究に志した・・・ 宮本百合子 「文学上の復古的提唱に対して」
出典:青空文庫