・・・長いこと親戚のほうに預けてあった娘が学齢に達するほど成人して、また親のふところに帰って来たということは、私に取っての新しいよろこびでもあった。そのころの末子はまだ人に髪を結ってもらって、お手玉や千代紙に余念もないほどの小娘であった。宿屋の庭・・・ 島崎藤村 「嵐」
・・・ ゆえに今、文部省より定めたる小学校の学齢、六歳より十四歳まで八年の間とあれども、貧民は決してこの八年の間、学に就く者なし。最初より学校に入らざる者はしばらくさしおき、たとい一度入学するも、一年にしてやめにする者あり、二年にして廃学する・・・ 福沢諭吉 「小学教育の事」
・・・ このように有効に組織されている小学校へ、全同盟の学齢児童を経費国庫負担で包括しようというのがソヴェト同盟五ヵ年計画文化活動の一大事業だ。 何しろ、帝政時代のロシアの小学校、特に農村の小学校は話の外だった。小学校の教師と云えば月五ル・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・この資金の一部で五ヵ年計画完成後には労働者および下級勤人の子供百五十万人が学齢以前の保護を受けるようになるだろう。 *一九二九年ほとんど千五百万人の子供がСССРにいた。 勤労者によって構成されているソヴェト社会の実践上、この幼児・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・、もう一つには「学齢以前児童」と札が出ている。 入って行くと、白い上っぱりを着て、頭も白い布でつつんだ姆母さんが出て来る。お客にも白い上っぱりを着せ、それから始めて内部を案内してくれる。托児所はキット一人の小児科医と数人の姆母さんと炊事・・・ 宮本百合子 「砂遊場からの同志」
・・・五ヵ年計画は、文化的事業の第一として、学齢児童全国就学を実施しようとしている。ソヴェト全同盟内の子供が国庫負担で四ヵ年の教育を受けることになるのだ。 革命前、ロシアの民衆の大半が文盲であったころプロレタリアートは彼等の鎖と汗とのほかに、・・・ 宮本百合子 「ソヴェト文壇の現状」
・・・それも、今度五ヵ年計画によって、すっかり国庫負担で全ソヴェト学齢児童就学ということになった。 ミーチャはまだ小さい。こないだ幼稚園で先生のリーダ・ボルトニコが大きくなったら何になると訊いた時、すぐ大きな声で、 ――僕、飛行機をこしら・・・ 宮本百合子 「楽しいソヴェトの子供」
・・・「ええ、学齢頃までは医者にかかりづめでしたよ。「だからですよ。 きっとそうですよ、 子供のうち弱かった子はそのまんま育っても、あんまり快活にはならない様ですもんねえ。 でもまあよく今までに御なりんなったんですねえ。・・・ 宮本百合子 「千世子(三)」
出典:青空文庫