・・・……あの老尼は、お米さんの守護神――はてな、老人は、――知事の怨霊ではなかったか。 そんな事まで思いました。 円髷に結って、筒袖を着た人を、しかし、その二人はかえって、お米さんを秘密の霞に包みました。 三十路を越えても、窶れても・・・ 泉鏡花 「雪霊記事」
・・・ この湖畔の呉王廟は、三国時代の呉の将軍甘寧を呉王と尊称し、之を水路の守護神としてあがめ祀っているもので、霊顕すこぶるあらたかの由、湖上往来の舟がこの廟前を過ぐる時には、舟子ども必ず礼拝し、廟の傍の林には数百の烏が棲息していて、舟を見つ・・・ 太宰治 「竹青」
・・・イナオは木で作った先きの方をじゃがじゃがさせた一種の木幣で、家の守護神様、穀物の神様、水や火の神様にこのイナオを捧げるのであります。 さすがに寒い所だけあって、神様の中でも炉の神様を最も大切にいたしますが、この神様はお婆さんでフッチと名・・・ 宮本百合子 「親しく見聞したアイヌの生活」
出典:青空文庫