・・・も、その頃は一層この国の宗徒に、あらたかな御加護を加えられたらしい。長崎あたりの村々には、時々日の暮の光と一しょに、天使や聖徒の見舞う事があった。現にあのさん・じょあん・ばちすたさえ、一度などは浦上の宗徒みげる弥兵衛の水車小屋に、姿を現した・・・ 芥川竜之介 「おぎん」
・・・あるいは多分、もっと確実な推測として、切支丹宗徒の隠れた集合的部落であったのだろう。しかし宇宙の間には、人間の知らない数々の秘密がある。ホレーシオが言うように、理智は何事をも知りはしない。理智はすべてを常識化し、神話に通俗の解説をする。しか・・・ 萩原朔太郎 「猫町」
・・・佐橋家の家譜等では、甚五郎ははやく永禄六年一向宗徒に与して討死している。「甲子夜話」には、慶長十二年の朝鮮の使にまじっていた徳川家の旧臣を、筧又蔵だとしてある。林春斎の「韓使来聘記」等には、家康に謁した上々官を金、朴の二人だけにしてある。も・・・ 森鴎外 「佐橋甚五郎」
出典:青空文庫