・・・林長館といえるに宿りしが客あしらいも軽薄ならで、いと頼もしく思いたり。 三十日、清閑独り書を読む。 三十一日、微雨、いよいよ読書に妙なり。 九月一日、館主と共に近き海岸に到りて鰮魚を漁する態を観る。海浜に浜小屋というもの、東京の・・・ 幸田露伴 「突貫紀行」
・・・私だって昔は浅草の父の屋台で、客あしらいは決して下手ではなかったのだから、これからあの中野のお店できっと巧く立ちまわれるに違いない。現に今夜だって私は、チップを五百円ちかくもらったのだもの。 ご亭主の話に依ると、夫は昨夜あれから何処か知・・・ 太宰治 「ヴィヨンの妻」
・・・正月の客あしらいかたがたどこからか借りて来たので、私が来たら聞かせようと言って待っていたとの事であった。そこでおとぎ歌劇「ドンブラコ」というのを聞かされた。 この器械はいわゆる無ラッパの小形のもので、音が弱くて騒がしい事はなかったが、音・・・ 寺田寅彦 「蓄音機」
出典:青空文庫