・・・ 高い上の方の洞に寄生木の育っている、大きな大きな欅の根元に倚りかかりながら、彼女はなだらかな起伏をもって続いているこの柔かい草に被われた地の奥を想う。 縦横に行き違っている太い、細い、樹々の根の網の間には、無数の虫螻が、或は暖く蟄・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・柳には、乾いた藻のような寄生木が、ぼさぼさ一杯ぶら下っている。沼気の籠った、むっとする暑苦しさ。日光まで、際限なく単調なミシシッピイの秋には飽き果てたように、萎え疲れて澱んでいる。とある、壊れた木柵の陰から男が一人出て来た。 彼の皮膚は・・・ 宮本百合子 「翔び去る印象」
・・・地響を立てて横たわる古い、苔や寄生木のついた幹に払われて、共に倒れる小さい生木の裂ける悲鳴。 小枝の折れるパチパチいう音に混って、「南へよけろよーッ、南ー」 ドドーンとまたどこかで、かなり大きい一本が横たわる。 パカッカッ…・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
出典:青空文庫