・・・一見なんらの関係もないような事象の間に密接な連絡を見いだし、個々別々の事実を一つの系にまとめるような仕事には想像の力に待つ事ははなはだ多い。また科学者には直感が必要である。古来第一流の科学者が大きな発見をし、すぐれた理論を立てているのは、多・・・ 寺田寅彦 「科学者と芸術家」
・・・ Lubrication に関して油の oiliness と称するものがこの場合の問題に密接な関係をもつであろうと思われる。この減摩油の効力を規定する因子としての oiliness は、ある学者の説では炭水素連鎖の屈撓性、あるいは連鎖が・・・ 寺田寅彦 「鐘に釁る」
・・・それでこの名がこの西洋人と球根という組み合わせに密接な連合をしていたのであった。もう一つの消極的な理由はこうである。 堅吉は二三年前に今の家に引っ越してから裏庭へ小さな花壇のようなものを作って四季の草花などを植えていた。去年の秋は神田の・・・ 寺田寅彦 「球根」
・・・そのせいか、自分の虎杖の記憶には、幼時の本町市の光景が密接につながっている。そうして、肉桂酒、甘蔗、竹羊羹、そう云ったようなアットラクションと共に南国の白日に照らし出された本町市の人いきれを思い浮べることが出来る。そうしてさらにのぞきや大蛇・・・ 寺田寅彦 「郷土的味覚」
・・・この二者は密接なる関係を有して、二つであるけれどもつまりは一つに重なるものと見てよろしいのであります。故に前申した通り文学と教育とは決して離れないものであるのであります。――明治四四、七、一『信濃教育』――・・・ 夏目漱石 「教育と文芸」
・・・私も日本人で、現代に生れたもので、過去の人間でも未来の人間でも何でもない上に現に開化の影響を受けているのだから、現代と日本と開化と云う三つの言葉は、どうしても諸君と私とに切っても切れない離すべからざる密接な関係があるのは分り切った事ですが、・・・ 夏目漱石 「現代日本の開化」
・・・なぜかと云うと、篇中に出て来る人間の心状、及び動作がことごとくタイフーンと舟火事なる自然力を離れずに、どこまでも密接な関係をもって展化進行するから、自然と人間が打って一丸となされて、偉大なる自然力の裏に副え物として人間が調子よく活動するから・・・ 夏目漱石 「コンラッドの描きたる自然について」
・・・一国の歴史は人間の歴史で、人間の歴史はあらゆる能力の活動を含んでいるのだから政治に軍事に宗教に経済に各方面にわたって一望したらどういう頼母しい回顧が出来ないとも限るまいが、とくに余に密接の関係ある部門、即ち文学だけでいうと、殆んど過去から得・・・ 夏目漱石 「『東洋美術図譜』」
・・・今日は何れの国家民族も単に自己自身によって存在することはできぬ、世界との密接なる関係に入り込むことなくして、否、全世界に於て自己自身の位置を占めることなくして、生きることはできぬ。世界は単なる外でない。斯く今日世界が実在的であると云うことが・・・ 西田幾多郎 「世界新秩序の原理」
・・・その有様に密接すること、同居人が眠食をともにするが如くなるがゆえなり。その相接すること密に過ぎ、かえって他の全体を見ること能わずして、局処をうかがうに察々たるがゆえなり。なお、かの、山を望み見ずして山に登りて山を見るが如く、とうてい物の真情・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
出典:青空文庫