・・・もう一度は、富士吉田で、私は大水に遭い多少の難儀をした。南伊豆は七月上旬の事で、私の泊っていた小さい温泉宿は、濁流に呑まれ、もう少しのところで、押し流されるところであった。富士吉田は、八月末の火祭りの日であった。その土地の友人から遊びに来い・・・ 太宰治 「服装に就いて」
・・・たしか富士吉田町の火祭りの光景を写したものの中に祭礼の太鼓をたたく場面がある。そのとき、もちろん無声映画であるのにかかわらず、不思議なことには、画面に写し出された太鼓のばちの打撃に応じて太鼓の音がはっきり耳に聞こえるような気がした。よく注意・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
出典:青空文庫