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・・・ されば夜となく、昼となく、笛、太鼓、鼓などの、舞囃子の音に和して、謡の声起り、深更時ならぬに琴、琵琶など響微に、金沢の寝耳に達する事あり。 一歳初夏の頃より、このあたりを徘徊せる、世にも忌わしき乞食僧あり、その何処より来りしやを知・・・
泉鏡花
「妖僧記」
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・・・いわんや、解剖学の不確実など、寝耳に水であろう。天然なる厳粛の現実の認識は、二・二六事件の前夜にて終局、いまは、認識のいわば再認識、表現の時期である。叫びの朝である。開花の、その一瞬まえである。 真理と表現。この両頭食い合いの相互関・・・
太宰治
「HUMAN LOST」