・・・家庭の純潔が言われても、社会がこれらの家庭の純潔を全うさせるだけの条件を一つも備えていなかったことはオルゼシュコの「寡婦マルタ」の哀れな生涯がまざまざとしめしている。それどころか近代文学の殆んど総てはこの近代の神聖な結婚と純潔な家庭生活等を・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・ 戦時中婦人を駆りたてて戦力の一部としたすべての婦人団体は、最もその責任を明らかにしなければならない今、尨大な数に達する婦人の離職者、寡婦、戦災孤児などの不幸な生存の危機を救う、どんな誠意も実力も喪っております。新聞は、大都市における婦・・・ 宮本百合子 「婦人民主クラブ趣意書」
・・・子もちの寡婦の苦しい生活と、労働条件のわるさ、停年制などは、組合が、互に扶け合う力で改善してゆかなければ、個人で変えようありません。 きょうのメーデーに、地球をまるい輪にかこんで行進している世界数億の働く男女がスローガンとしてかかげ・・・ 宮本百合子 「メーデーと婦人の生活」
・・・オルゼシュコというポーランドの婦人作家の書いた「寡婦マルタ」をよめば、良人に全生活を庇護されてゆくように、その幸福を飾る花であることを目的としたまとまりないいわゆる淑女の教養きり身につけていない善良で気品ある女が、いったん逆境に陥って燃える・・・ 宮本百合子 「ものわかりよさ」
・・・「従妹ベット」「ウウジニイ・グランデ」、モウパッサンの「女の一生」などは法律の上にも経済の上にも受け身な女の一生の真情の悲劇を心を貫く如く描いている。「寡婦マルタ」はポーランドの婦人作家オルゼシュコによって書かれているが、この作品は従来の女・・・ 宮本百合子 「若い婦人のための書棚」
・・・主人は四十を越した寡婦で、狆を可哀がっている。怜悧で、何の話でも好くわかる。私はF君をこの女の手に托したのである。 ―――――――――――― 私がF君に多少の心当があると云ったのは、丁度その頃小倉に青年の団体があって・・・ 森鴎外 「二人の友」
これは小さい子供を持った寡婦がその子供を寐入らせたり、また老いて疲れた親を持った孝行者がその親を寝入らせたりするのにちょうどよい話である。途中でやめずにゆっくり話さなくてはいけない。初めは本当の事のように活溌な調子で話すが・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「破落戸の昇天」
出典:青空文庫