・・・仕事にとりかかる一寸前。昨夜鶴さんが保田からかえって来て、すっかり皮膚をやいて皮をはがしてかえって来ました。「己は顔が貧弱だから黒い方がいいね。どうもそうらしい。」そういう意見で、得意そうでした。一昨日は重治さんのところで午後を暮しました。・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ お立ちになってから林町へ一緒にまわってお風呂に入って、十二時一寸前家へかえりました。栄さんがあなたのシャツ類を編んでいてくれたのが待っていて、お茶をのんであのひとはかえり、私は島田の母様[自注8]が私へ下さったお手染のチリメンの半襟を・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・太平洋戦争にまで拡大されようとしていた寸前で、書籍目録からは、多くの貴重な本の名が省かれなければならなかった。こんにちエンゲルス「家族・私有財産・国家の起源」「空想より科学へ」マルクス「賃労働と資本」などは婦人の常識の基礎としても必読の本で・・・ 宮本百合子 「若い婦人のための書棚」
出典:青空文庫