・・・今までの日本の対外文化政策で、「源氏物語」という作品をどういう風に紹介したかといえば、あの作品は日本の十一世紀頃に書かれたものであって、その作者である紫式部という女性は、藤原家出身の中宮が、政策のために自分の周囲に文学の才能ある婦人を召しか・・・ 宮本百合子 「婦人の創造力」
・・・そして、対外的には反ソヴェト的にゴーリキイがそこに引き合いに出されているのを見た。私はゴーリキイが世界的にもっている影響力の深大さに打たれた。一九二八年のゴーリキイのソヴェト訪問の結果は、世界のすべての資本主義国が卑しい期待にがつがつして待・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・辛辣のようだけれども、本当の心持で日本の対外関係を案じている傍聴人の耳に、そういう彌次の濫発が果して頼もしい代議士連の緊張した態度としての印象を与えただろうか。今日の社会人は、幾十人の大臣を演壇で彌次り倒し得たとしても、現実を合理的に展開さ・・・ 宮本百合子 「待呆け議会風景」
・・・ 白い布で頭を包んだ女に、自分は対外文化連絡協会からの手紙を渡した。「一寸まって下さい」 暫くすると、白い手術着を着た若い医師が手紙片手に出て来た。「院長は今日保健省へ行きましたが、当直医員の案内でもいいですか?」 自分・・・ 宮本百合子 「モスクワ日記から」
・・・特に、自分としては心にもないポーズを、母などが対外的にやるようなことが起って、嬉しさより苦痛と不安とが次第に加わった。 当時私は文学的な影響としては最も多くトルストイの翻訳から学びもし、模倣もしていた。「コサック」や「アンナ・カレニ・・・ 宮本百合子 「行方不明の処女作」
・・・対内的でなくして対外的であった。徳川時代の主従関係のように個人的なものではなく、対国家の関係であった。これだけの相違が我々父子の間に存している。その事をまず小生は前記の手紙によって感じさせられたのである。 正直に言えば自分は、二十七日の・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
出典:青空文庫