・・・ 益々その範囲を拡大するという風評と図書課長談として同様の意嚮の洩されたことは、事実指名をされなかった窪川夫妻などの執筆場面をも封鎖した結果になっている。 一月十七日中野重治と自分とが内務省警保局図書課へ、事情をききに出かけた。課長・・・ 宮本百合子 「一九三七年十二月二十七日の警保局図書課のジャーナリストとの懇談会の結果」
・・・すべての知識、すべての合理的探究、価値評価としての批判は封鎖されていた。在るものは、権力の強制と、その強制を可能ならせている日本の軍国的な封建的な社会の雰囲気と、知識人たる自覚を放棄した一民衆としての忍苦しかなかった。似非学者、似非作家、似・・・ 宮本百合子 「誰のために」
・・・その上、野蛮な権勢を守るための言論封鎖の特徴として、そういう人権蹂躙が行われているという事実にふれて語ることさえ、犯罪行為として罰した。ナチスのドイツが同じこと、あるいは、もっとひどいことをした。第二次大戦の結果は、言論を封鎖し、出版統制を・・・ 宮本百合子 「地球はまわる」
・・・ピカソの世界は社会的な源泉の上に立ちながら芸術としての領域においては全く個人的な封鎖をされている。ピカソとマチスを並べてみてある共通性があるとしても、それぞれ独自の世界であり、ルオーのグロテスクは武者小路実篤にわかると思われていても数百万の・・・ 宮本百合子 「ディフォーメイションへの疑問」
・・・恋愛とか結婚とかいう問題について受身であったばかりでなく、性生活そのものについての理解がほとんど暗黒のまま封鎖されていた。今日一時に扉が開いて、性的な問題は公然と取り上げられ始めたけれども、今日の青春がおかれている事情を見れば、そこにはそれ・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・その年の一月から、ひろ子の文筆上の仕事は封鎖されて、生活は苦しかった。巣鴨にいた重吉は、ひろ子が一人で無理な生活の形を保とうと焦慮していることに賛成していなかった。弟の行雄の一家と一緒に暮すがよいという考えであった。けれども、ひろ子は、抵抗・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・日本の社会は封鎖されていて、外国語は特権階級の教養であった。したがって、外国文学または外国語で働く人は作家とはまたちがう一種の特別なものとしての自覚をもっていた。 この節、翻訳権の問題があって、すべてのジャーナリストが困却しているとおり・・・ 宮本百合子 「文化生産者としての自覚」
・・・天皇という偶然の地位に生れ合わせた一個の人間を不幸にするシステムであり、しかもその人をその特殊地位に封鎖して、その人にその身の不幸を自覚させず、人間ばなれした日常から脱出しようと焦慮することさえ知らせない一つのシステムであった。知らしむべか・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・マリア・バシュキルツェフの日記の面白さは、一つの特徴ある個性が境遇の封鎖を破って、どうにかして人間らしく人間の中に生きようとした、その真摯な格闘にあるのである。 或る場合一冊の伝記は数冊の小説よりも人の心をうつ。それは何故であろうか。絶・・・ 宮本百合子 「まえがき(『真実に生きた女性たち』)」
・・・それほど、世界に向ってひらかれているべき私たちの眼、耳、そして知識と心情とは根本から封鎖されていたのである。 その夜、局からの全波聴取のニュースを伝えたアナウンサアの話しぶりは私がこれ迄どんなニュースでもきかなかったほど、自身の感動に溢・・・ 宮本百合子 「みのりを豊かに」
出典:青空文庫