・・・もっとも最初は、奥野将監などと申す番頭も、何かと相談にのったものでございますが、中ごろから量見を変え、ついに同盟を脱しましたのは、心外と申すよりほかはございません。そのほか、新藤源四郎、河村伝兵衛、小山源五左衛門などは、原惣右衛門より上席で・・・ 芥川竜之介 「或日の大石内蔵助」
・・・ 板倉周防守、同式部、同佐渡守、酒井左衛門尉、松平右近将監等の一族縁者が、遠慮を仰せつかったのは云うまでもない。そのほか、越中守を見捨てて逃げた黒木閑斎は、扶持を召上げられた上、追放になった。 ―――――――――――・・・ 芥川竜之介 「忠義」
・・・これは海の中に自から水の流れる筋がありますから、その筋をたよって舟を潮なりにちゃんと止めまして、お客は将監――つまり舟の頭の方からの第一の室――に向うを向いてしゃんと坐って、そうして釣竿を右と左と八の字のように振込んで、舟首近く、甲板のさき・・・ 幸田露伴 「幻談」
出典:青空文庫