・・・国威というものの普通解釈されている内容によって、それを或る尊厳、確信ある出処進退という風に理解すると、今回のオリンピックに関しては勿論、四年後のためにされている準備そのものの中に、主としてそういう抽象名詞を愛好する人の立場から見ても何か本質・・・ 宮本百合子 「日本の秋色」
・・・三十数年昔の十一月のある日の彼が語ったよりも、更に深い日本への愛と情熱とをもって、日本のヒューマニティーの尊厳と日本の理性の確立のために語ったであろうと信じる。なぜなら、ここにこまごまとのべるまでもなく、こんにち日本の特権階級は、日本の民族・・・ 宮本百合子 「日本の青春」
・・・そして権力のために犠牲にされることのない市民の個々の家庭の尊厳を主張しはじめた。同時に両性の清らかな愛による互いの選択と、その神の嘉し給う結合の形としての結婚を主張した。 ところでこの「神聖なる結婚」「純潔なる家庭」といいながら、資本主・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・ここには、本を読んだからと云って殴られる台処働きの小僧の中に燃えている人間的尊厳の抗議、給料を祖父にとられる貧しい小僧だから、淫売をする洗濯女といちゃついて、酔倒れた兵卒のポケットから財布を掠めもするだろうと思われ、全然事実とは違うその卑俗・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・『働く婦人』の問題は、「尊厳冒涜」という意味のところで一応納まりました。「敏子」さんの投書と、「愛子」さんの投書の中に、共産党という三字があって、これを幸とつかまえられたのです。 四十日ばかり経つと、いつの間にか、調べの中心点がかわって・・・ 宮本百合子 「ますます確りやりましょう」
・・・それだのに彼の読む本は何と人間の尊厳、発展の可能、真理の強さについて語っていることだろう。ゴーリキイは遂にカザン市に行って、カザン大学へ入る決心をした。 ところが、行って見るとカザン市で彼を迎えたのは歴史に名高いカザン大学ではなく、着い・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
・・・このことは、しかし、本当に婦人にとって「個人の尊厳」を守れる社会的経済的土台があることを意味しているだろうか。 婦人に離婚の自由が認められた、ということは、特にこれまで隠忍をつづけている、日本の女性にとっては、何か復讐的な快感であるかも・・・ 宮本百合子 「離婚について」
出典:青空文庫