・・・実に取るに足りないような小国でありますが、しかしこの国について多くの面白い話があります。 今、単に経済上より観察を下しまして、この小国のけっして侮るべからざる国であることがわかります。この国の面積と人口とはとてもわが日本国に及びませんが・・・ 内村鑑三 「デンマルク国の話」
・・・ビ教授はそれから後にアメリカへ渡ってかの地でかの著明な大著を刊行したのである。小国の学者になるものではないという気がしたのはあの時であった。 ヘルマンは古典に通じていて、気象の講義にも色々古典の引用が出て来た。いつか私邸に呼ばれたときに・・・ 寺田寅彦 「ベルリン大学(1909-1910)」
・・・欧州にて和蘭、白耳義のごとき小国が、仏独の間に介在して小政府を維持するよりも、大国に合併するこそ安楽なるべけれども、なおその独立を張て動かざるは小国の瘠我慢にして、我慢能く国の栄誉を保つものというべし。 我封建の時代、百万石の大藩に隣し・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
・・・ 彼女は落着いた文章のうちに情熱をこめて、小国ながら勇敢なベルギーは容易にドイツ軍の通過を許さないだろうとフランス人はみな希望を持ち、苦戦は覚悟の上だけれどきっとうまくゆくだろうと信じていること、そして「ポーランドはドイツ軍に占領されま・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
シルビア・シドニーが一人二役を見せどころとして主演した「三日姫君」という映画があった。外債募集のためアメリカへやって来た何とかいう世界地図にものっていないような弱小国の麗わしい姫が、ニューヨークへついて間もなくオタフク風に・・・ 宮本百合子 「花のたより」
・・・しかし、その半面では西ヨーロッパと東ヨーロッパの対立を挑発し、また秘密計画Xと金権活躍を公言して、弱小国の人民の意志の買いしめを宣言して憚らない。 現代の独占資本という魔ものがひきおこすあらゆる混乱と矛盾を、魔もののしきたりの下で解決し・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
出典:青空文庫