・・・ 外国と交際を開きて独立国の体面を張らんとするには、虚実両様の尽力なかるべからず。殖産工商の事を勉めて富国の資を大にし、学問教育の道を盛んにして人文の光を明らかにし、海陸軍の力を足して護国の備えを厚うするが如き、実際直接の要用なれども、・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・その次第は前にいえるごとく、氏の尽力を以て穏に旧政府を解き、由て以て殺人散財の禍を免かれたるその功は奇にして大なりといえども、一方より観察を下すときは、敵味方相対して未だ兵を交えず、早く自から勝算なきを悟りて謹慎するがごとき、表面には官軍に・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
・・・わたしたちの求めているのが民族の平和と自立であり、生活の安定と人間らしい文化のよろこびである以上、自分たちの目標から目をはなさず、希望を実現させるあらゆる可能のためにわたしたちに出来るところから尽力してゆかなければうそだと思う。 これま・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・ 夫婦は相談して、とにかく一月分だけは明日渡して、栄蔵の村の者へ貸してあるものがあるから、あれを戻す様に尽力してもらって、入ったものの中から出した方が相方都合がいいときめた。「ああ云う病気は殆んど一生の病気なんですからねえ。・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
・・・文学者は、この複雑で長い期間に亙る発展の見とおしに即して、自身の文学が、やがて真に生きこされ得る時代をもたらすようにと尽力する。社会主義リアリズムの方法は見とおしの長い方法であるはずだ。曲折にたえて、社会と個人の相互関係については、動的で柔・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・芥川、池谷、千葉賞のように、故人となった文学者の記念のための文学賞ばかりか、農民文学には有馬賞というのがあり、中河与一氏の尽力によって成立してその第一回受賞者は中河氏であった、大倉出資の透谷賞というのもあるようになった。 今度の事変が、・・・ 宮本百合子 「今日の文学と文学賞」
・・・勿論作品の発表のために尽力している。けれどもその時代のことと今日の右の事情とは、二十年の歳月が日本と私たちとを変えているように、質を変えているのである。 これらの曲折の間に、プロレタリア文学はどのような存在を続けて来ているであろうか。文・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・などで、生活的・文学的感覚を社会的にひろめ深めてゆこうと努力している点で注目をひいている『埼玉文学』にしろ、同人たちは、より人間らしい社会生活の確保と、その文学の確立のために尽力してゆくという大きくて永続的な人民的努力のうちに、埼玉在住の人・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・同時に、きょうの社会現象のあれこれが、未亡人の官製全国組織に、かつて軍時貯蓄勧誘に尽力した某女史が再登場しているということまでふくめて、細密に観察され評価されてゆくことも、必要である。そして、双方ともにそれぞれの意義をもっている二つの研究に・・・ 宮本百合子 「戦争はわたしたちからすべてを奪う」
・・・用紙割当のことでは羽仁説子氏の尽力もあった。新聞経営の実際面は、当時、外地からひきあげてきていた数名の専門新聞人が引き受け、婦人の新聞として独自の編輯面をクラブの人々がうけもつという仕組みにされた。つまり、クラブの発起人であった人々は、執筆・・・ 宮本百合子 「その人の四年間」
出典:青空文庫