・・・ああはたして仁なりや、しかも一人の渠が残忍苛酷にして、恕すべき老車夫を懲罰し、憐むべき母と子を厳責したりし尽瘁を、讃歎するもの無きはいかん。 泉鏡花 「夜行巡査」
・・・経済・政治の専門家が条約改正のために尽瘁し、ちょん髷を剪らせ、廃藩を行った、そのことが文化の面では、長いものには巻かれろ式な戯作文学の伝統と近代精神との入りくんだ摩擦に導いたのである。 社会的現実の各面に、今日この摩擦がより発展した形に・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・日本の婦人が、人民の生活の安定と平和とのために尽瘁しなければならない部面は日に日に多くなって来ている。 一九四七年十一月〔一九四七年十二月〕 宮本百合子 「再版について(『私たちの建設』)」
・・・市川房枝などの運動と並行して昭和二年ごろ無産派婦人政治運動促進会というものができ、全国婦人同盟が組織され、その流れは爾後七八年間種々転変しつつ、日本の勤労的な生活にある婦人層の広汎な政治的成長のために尽瘁しつづけた。明治の暁の光の中で半ば生・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・二世紀昔のスウィフトの馬には及びもつかないゾシチェンコの猿にひきまわされて、自身の尽瘁と価値の上にゲラゲラ笑いのつばをとびちらしているとしたら、それは忍びがたい光景ではないだろうか。ちょうど私たちの日本で、天皇制権力の犯した狂気のような国際・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
出典:青空文庫