・・・野間宏にとっては、人々によって語られているあたりまえの日本語さえも、新しい生活の発見に属すであろう。「青年の環」「時計の目」「硝子」へのプロセスがそのことを十分暗示している。 フランスの社交小説の大体は、こんにちのフランスには存在しえな・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・林学博士と云えば、農学の一部で、それは自然科学の分野に属す学問上の博士ということであろう。その人が、林学について語らずに、貯蓄法について語っていることを、吾もひともみっともない妙なことと感じない感覚というものは、日本のどういう文化・科学性を・・・ 宮本百合子 「市民の生活と科学」
・・・子供は子供の属す組織を通じて「若い観衆の劇場」へ! ここにソヴェト同盟の劇場の、晴れやかな歓びの源がある。 たとえ、或るものはまるきり無代でないにしろ、二十七カペイキの切符代で、こんな面白い、そしてためになる芝居が観られる。ソヴェトの子・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・ 知られているとおり、この文芸復興という声は、最初、林房雄などを中心として広い意味でのプロレタリア文学の領域に属する一部の作家たちの間から起った呼び声であった。それらの人たちの云い分を平明に翻訳してみると、これまで誤った指導によって文学・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・アジアにおいて、限りない権限をゆだねられている一人の老将軍が、朝鮮の戦線に原子兵器を使用するかしないかを決定するという世紀の絶壁に立たされたとき、彼にノーと言わせる支柱となり、彼を彼の属す国家の人民からさえも世紀の戦争犯罪人とされることから・・・ 宮本百合子 「戦争はわたしたちからすべてを奪う」
・・・と云う家族の姓名に、殆ど世間知らずに近い愛すべきグローリーを感じて居る彼女は、Aが、彼の名をすて、それに属すことによって、遙によい社会的地位を得、世間の人間の信用を増し、結局、私の為に幸福になると云われる。が、自分には、それがフェーアである・・・ 宮本百合子 「小さき家の生活」
・・・私は、自分の場合は、後の部に属す性質をもったものであったと考えている。 私が、旧作家同盟に参加した頃、或る種の人達は、片岡鉄兵がしたと同じように私も早速ブルジョア・インテリゲンツィア作家として持っていた文学上の腕をそのまま活用して、いろ・・・ 宮本百合子 「問に答えて」
・・・しかしながら、それらのブルジョア作家、批評家の大部分が、同志小林多喜二の業績を追慕しながらも、自分の属す階級の制約性によって同志小林の不撓の発展の本質を正しく評価し得ず、ある者は結果として反動におちいり、ある者は誤った文化主義を強調するに至・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価に寄せて」
・・・やはり、南京寺の一つ、黄檗宗に属す。この寺は、建物も大観門から青蓮堂――観音廟を見たところ、同じ辺から護法堂へ行く窟門の眺めなど、趣き深い。永山氏の紹介で、現住三浦氏が各建物を案内し大方丈の戸にある沈南蘋の絵を見せて呉られた。護法堂の布袋、・・・ 宮本百合子 「長崎の一瞥」
・・・民主的な文学者として文学の諸問題を語ることはわたしの属す文学団体そのものの内部を語ることでさえもあり得ない。 この了解に立って、わたしは語り得なければならない。〔一九五一年一月〕・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
出典:青空文庫