・・・しかし御用部屋の山崎勘左衛門、御納戸掛の岩田内蔵之助、御勝手方の上木九郎右衛門――この三人の役人だけは思わず、眉をひそめたのである。 加州一藩の経済にとっては、勿論、金無垢の煙管一本の費用くらいは、何でもない。が、賀節朔望二十八日の登城・・・ 芥川竜之介 「煙管」
・・・主がの血筋を岩田が跡に入れてもらいたいいうてな」 また彼れの方を向いて、「そうじゃろがの」 それに違いなかった。しかし彼れはその男を見ると虫唾が走った。それも百姓に珍らしい長い顔の男で、禿げ上った額から左の半面にかけて火傷の跡が・・・ 有島武郎 「カインの末裔」
・・・「そやさかい、岩田はんに頼んどるのやおまへんか?」「女郎どもは、まア、あッちゃへ行とれ。」「はい、はい。」 細君は笑いながら、からの徳利を取って立った。 友人は手をちゃぶ台の隅にかけながら、顔は大分赤みの帯び来たのが、そ・・・ 岩野泡鳴 「戦話」
・・・ 共産党の中央部が破壊を蒙った熱海事件がこの一九三二年十月にあり、そのころ共産党中央委員であった岩田義道が、検挙と同時に殺された。翌一九三三年の二月二十日に小林多喜二が築地署で拷問のために虐殺された。つづいて、野呂栄太郎が検挙され、この・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
・・・そのこころに通じるものがあるようで、火野葦平、林房雄、今日出海、上田広、岩田豊雄など今回戦争協力による追放から解除された諸氏に共通な感懐でもあろうか。 東京新聞にのった火野の文章のどこの行をさがしても、「昔にかえった」出版界の事情「老舗・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・そのなかの一人である安倍源基は特高課長、警視総監、内務大臣と出世したが、その立身の一段一段は小林多喜二の血に染められ岩田義道の命をふみ台にしている。天羽英二は情報局長としてあんなに人民の言論と思想、文化の自由を根こそぎ刈った。 これらの・・・ 宮本百合子 「事実にたって」
・・・ 岩田豊雄「海軍」 獅子文六――このひとは「自由学校」┐ 辰野隆 ├ 福田恒存 ┘福田恒存 諷刺、喜劇はジャーナリズムでも要求されているし 読者の・・・ 宮本百合子 「東大での話の原稿」
・・・左翼に対する弾圧激しく『働く婦人』『プロレタリア文化』『プロレタリア文学』等の発行は杜絶えがちになった。岩田義道が警察の拷問によって虐殺された。 執筆小説「鋪道」を『婦人之友』に連載中、検挙によって中絶。一九三三年・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・小林多喜二を拷問で殺したのも、安倍源基とその部下の仕事です。岩田義道を殺したのも、上田茂樹をとうとう行方不明のままほうむり去ってしまったのも、彼の立身の一段でした。その頃非合法におかれていた共産党の中央委員のなかに、大泉兼蔵、小畑某というス・・・ 宮本百合子 「ファシズムは生きている」
・・・小林多喜二を殺したのは安倍源基とその配下です。岩田義道を殺したのも野呂栄太郎をころしてしまったのも安倍源基です。治安維持法が改悪されて日本の民主的なすべての理性、合理的な平和を愛するすべての人の心を踏みにじってしまったのは治安維持法の仕事で・・・ 宮本百合子 「平和運動と文学者」
出典:青空文庫