・・・四等国。北海道、本州、四国、九州。四島国。春が来た。滅亡か独立か。光は東北から。東北の保守性。保守と封建。インフレーション。政治と経済。闇。国民相互の信頼。道徳。文化。デモクラシー。議会。選挙権。愛。師弟。ヨイコ。良心。学問。勉強と農耕。海・・・ 太宰治 「春の枯葉」
・・・ まず第一にこの国が島国であることが神代史の第一ページにおいてすでにきわめて明瞭に表現されている。また、日本海海岸には目立たなくて太平洋岸に顕著な潮汐の現象を表徴する記事もある。 島が生まれるという記事なども、地球物理学的に解釈する・・・ 寺田寅彦 「神話と地球物理学」
・・・ それはとにかく、日本が大陸から千切れて島国になっても、船というものを造ることに成効した人間は、永い間に、何遍となくそうして色々な方面から日本の国に渡って来たであろう。それと同時に多種多様な民族の色々な文化の流れがこの極東の細長い島環国・・・ 寺田寅彦 「短歌の詩形」
・・・日本の本土はだいたいにおいて温帯に位していて、そうして細長い島国の両側に大海とその海流を控え、陸上には脊梁山脈がそびえている。そうして欧米には無い特別のモンスーンの影響を受けている。これだけの条件をそのままに全部具備した国土は日本のほかには・・・ 寺田寅彦 「涼味数題」
・・・薄黒い島国に住んでいては、知らぬも道理じゃ。プロヴォンサルの伯とツールースの伯の和睦の会はあちらで誰れも知らぬものはないぞよ」「ふむそれが?」とウィリアムは浮かぬ顔である。「馬は銀の沓をはく、狗は珠の首輪をつける……」「金の林檎・・・ 夏目漱石 「幻影の盾」
・・・ とくに、アジア大陸に向って、ひとつらなりの弓のようにはられている島国、日本の人民の運命は、世界平和の要求がたかまるにつれ、アジア大陸の民主勢力が拡大されるにつれ、一層力づよく平和のためにたたかわなければならない立場になりました。 ・・・ 宮本百合子 「国際婦人デーへのメッセージ」
・・・日本という一つの島国がアジアに向って太平洋のはじにつらなっているという自然の現象は、日本が人類平和に対して害毒の島とされなければならない宿命を語ることではないのである。 日本の人民そのもののうちに平和を守ろうとしている誠意を信じることが・・・ 宮本百合子 「この三つのことば」
・・・まして確然とした世界観をもつプロレタリア作家が、遠く島国日本の客観情勢を展望し、中国の新興力を鳥瞰図的に把握し、しかもソヴェト同盟における大建設の地響きを足に感じながら目前に大危機を経験しつつあるドイツを見ているとしたら大小説を書きたくなら・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学における国際的主題について」
・・・新しい歴史がひらけたアジアで、独特な辛苦の立場におかれている島国・日本の人民が、どのように自身を世界平和かくらんのために使役されることからまもり、自身と世界の良心のために、これまでだまっていたつましい人民が、どんなにいろいろさまざまの現実に・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
・・・けれども、けれども、私には、小さい島国の、黒い柔かい、水気豊かな春の土が、足の素肌に感じられる。抜けようとしても、抜けられない泥濘の苦しさと混乱を、此の両足に感じる。何処へ行っても、祖国が足の下にあるだろう、地球の果にまで走ろうとしても、祖・・・ 宮本百合子 「無題」
出典:青空文庫