・・・日本からは島崎藤村夫妻が出席した。日本の代表的文学者である藤村が、世界平和とファシズムに反対するためのさまざまの意見を求められたとき、わたくしにはわかりません、存じませんでおしとおしたことは、先頃の朝日新聞にもかかれていた。それから日本のペ・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
現代の日本の作家の中で、その作品に最も多く自然をうけ入れ、示しているのは誰であろう。島崎藤村をその一人としてあげ得ると思う。 藤村は、明治五年、長野県の馬籠で生れた。家は馬籠の旧本陣で、そこの大規模な家の構え、召使いな・・・ 宮本百合子 「藤村の文学にうつる自然」
・・・一葉は明治の初め、自然主義が起ろうとする頃、それに対抗して活溌な文芸批評などを行っていた森鴎外を先頭とし、若い島崎藤村その他によって紹介されたヨーロッパのロマンティシズムの影響をうけながら、一葉自身がもっていた日本風の昔気質のような気分――・・・ 宮本百合子 「婦人の創造力」
・・・ 日本代表の有島氏は、ヴェノスアイレスの第十四回大会へ島崎藤村氏と共に出席したのだから、恐らくこの一年の間に世界の空気がどのように動き、対立する気流はどのように深化したかを、些かは身に添えて感じていられるであろう。日本における外国文学翻・・・ 宮本百合子 「ペンクラブのパリ大会」
・・・ それらの歌が、日本の近代文学のなかでは少年の内的生活の波瀾の描写としてよりは、青年期の憂悶としてとらえられていることも私たちの注目をひく。島崎藤村の「春」「桜の実の熟する時」はいずれも明治二十年代のロマンティシズムのなかに生れ二十歳前・・・ 宮本百合子 「若き精神の成長を描く文学」
・・・日本から行った阿部知二、北村喜八の両氏はこんどこそ、かつて島崎藤村がヴェノスアイレスのペンクラブ大会へ行ったときのようには振舞わないだろう。藤村は世界の文学者がこぞって反ファシズムの文化闘争を決議したその大会で、終始、日本の文学者として反フ・・・ 宮本百合子 「私の信条」
・・・田山君とか、島崎君とか、正宗君とか、それから少し後に仲間入をしたような小山内君とか、永井君とか云うような諸君でしょう。それと少し距離のある方面で働いているのは夏目君に接近している二三の人位なものでしょうか。小説以外の作品を出していられる諸君・・・ 森鴎外 「Resignation の説」
出典:青空文庫