・・・汚れをいとわないとか、古くさい結婚の形にしばられない感情の冒険とかいうことの現実をみると、結局は社会の経済生活の崩壊による女性の男への寄生的生活の合理化であり、広汎な売娼生活の合理化だということが分ります。 五 人民的・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・ 無産派文学の運動――すべての国で人民の多数を占める勤労階級の生活とその感情を表現する文学が、従来のブルジョア階級の文学にかわるべきであるという考えは、第一次ヨーロッパ大戦の後、旧い権威の崩壊と中流社会のプロレタリア化を経験したすべての・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第三巻)」
・・・をどんな目にあわせることになったか、また、自分なんかは、と測定した個々の人の文学の才能や人生への確信を、どんな過程で崩壊させていったかという事実を顧みると、惨澹たるものがある。 野蛮な権力は、文学面で狙いをつけた一定の目標にむかって、ほ・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・ここにこそ具体的な自我と自意識の発展と崩壊のテストがある。もし、そんな年より相手に議論しても大人気ないと判断したのなら、それだけの価値しかもっていない対手と話すらしいあたりまえの口のききかたをしていてよい。大学教授であり、その人々の直接か間・・・ 宮本百合子 「生きつつある自意識」
・・・医師ラヴィックの生活をとおして全面に描き出されている旧いヨーロッパの秩序の崩壊に対するやきつくように鋭い意識とその意識につらぬかれつつそれをもちこたえてゆくダイナミックで強靭な感覚と神経。「凱旋門」が日本の若い人々を魅した秘密はそこにあるの・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・ 社会全般のこととしていえば、この数ヵ月間の推移によって、過去数十年、あるいは数百年、習慣的な不動なものと思われてきた多くの世俗の権威が、崩壊の音たかく、地に墜ちつつある。その大規模な歴史の廃墟のかたわらに、人民の旗を翻し、さわやかに金・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・人々を益々強固な抵抗におき、孤立させ、運動を縮みさせ、他面では、すべての平凡な心情を恐怖においたてて、根本は治安維持法に対するその恐怖心を、所謂指導者やその理論批判に集中表現させることで、進歩的戦列を崩壊させる手段としたのであった。 き・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
・・・ しかしながら、此の資本主義機構は、崩壊しつつあるや否や、と云うことは、最早やわれわれ文学に関心するものの問題ではない。 われわれの問題は、文学と云うものが、此の資本主義を壊滅さすべき武器となるべき筈のものであるか、或いは文・・・ 横光利一 「新感覚派とコンミニズム文学」
・・・ここではパートの崩壊、積重、綜合の排列情調の動揺若くはその突感の差異分裂の顫動度合の対立的要素から感覚が閃き出し、主観は語られずに感覚となって整頓せられ爆発する。時として感覚派の多くの作品は古き頭脳の評者から「拵えもの」なる貶称を冠せられる・・・ 横光利一 「新感覚論」
・・・これを抑えなければ社会は崩壊してしまうであろう、というのである。彼は民衆の力の勃興を眼前に見ながら、そこに新しい時代の機運の動いていることを看取し得ないのであった。正長、永享の土一揆は彼の三十歳近いころの出来事であり、嘉吉の土一揆、民衆の強・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫