・・・を思い出し、この地方の住民が数世紀に亙って様々の形で行って来た支配権力との揉み合いの歴史を、深く思いやった。帝政ロシアの権力は、石油とカスピ海を眼目にこの都市を侵略した。一九一七年には、ペルシアの石油を我ものにしただけでまだ満足しない帝国主・・・ 宮本百合子 「石油の都バクーへ」
・・・ 帝政ロシアの貴族たちはフランス語で話した。中国の「台湾ぐみ」も自分の国語を二つもっている連中である。民衆は常にその民族の言葉を話す。〔一九五〇年六月〕 宮本百合子 「長寿恥あり」
・・・と―― 成程、われわれは、帝政時代のロシア貴族階級が生んだ国際的な作家の一人である伯爵イン・ツルゲーネフの生涯を語るには、彼の娘を生んですてられた美しい、字の書けない農奴の娘アブドーチャの存在を知らなければならない。更に、彼の半生を支配・・・ 宮本百合子 「ツルゲーネフの生きかた」
・・・のもっとも力づよく描き出されている場面の一つに、裁判の情景がある。帝政時代のロシアの裁判所の公判廷に、客を殺した一人の売笑婦として、カチューシャがひき出されて来る。貴族の陪審員として、偶然、その日の公判に臨席していたネフリュードフが、シベリ・・・ 宮本百合子 「動物愛護デー」
・・・タタール人抑圧の悲憤にみちた物語は、文豪のトルストイも小説に書いている。帝政時代のロシア支配階級はその他多くの弱小民族を圧迫し生活権を奪うことによって豊沃な耕地を、森林を、鉱山と港とを自分の富として加えた。タタール民族ユダヤ民族は、自分らの・・・ 宮本百合子 「ドン・バス炭坑区の「労働宮」」
・・・ ナポレオン伝において、大革命につづく混乱期に列国の旧勢力とフランス内の旧勢力とがどのように結托して、名誉ある本命の血から帝政と王制復古の馬鈴薯を生やしたかという要が解剖されていないならば、こんにちの日本のわたしたちにとって読むべき真実・・・ 宮本百合子 「なぜ、それはそうであったか」
・・・そしてナポレオン三世の帝政布告に抗し二十年間亡命、一八七〇年普仏戦争による帝政崩壊後かえる。「レ・ミゼラブル」は亡命中。 バルザックとユーゴーとの大きい差は、ユーゴーは二つの対立物から更に一つを生み出す能力をもっていたが、バルザックは、・・・ 宮本百合子 「バルザックについてのノート」
・・・ ツァーの支配者たち、貴族と資本家の多くの者はロシアの人民が物の道理をはっきり知って、搾取に反抗するのを嫌った。帝政ロシア時代の小学校教育がどんなひどいものであったかは、チェホフが手紙の中で屡々熱情的に抗議しているのを見てもわかる。・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・かつてハルビンが帝政華かなりし頃はロシア人は支那人を鞭で打ってキタイスカヤ街のような通りはこの野蛮人を通らせなかった」 奉天にパチパチの起ったことについて日本帝国主義に内在する経済的・政治的理由も眼中に入れていない。彼は無智な軍用ペンを・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学における国際的主題について」
・・・シチェードリンが、十九世紀中葉の帝政ロシアの暗い空気に抗して、地方貴族の生活の腐敗をあますところなく描き出すことで、より健全な人間生活への翹望を示していることは、訳者の序文によって明らかだし、作品そのものが何よりも熱く語っている。ロシア文化・・・ 宮本百合子 「翻訳の価値」
出典:青空文庫