・・・その結果が、第一次大戦の根本原因であったそれぞれの国の資本主義による生産事情・社会機構の矛盾の調節という現実問題に帰着して、一九一七・一八年に、多くの国々で古い権力の形がくずれた。ロシアのツァーリズムの絶対主義政治、ドイツのカイゼルの軍国主・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・ 大略、右のような背景の上に現今の米国人の生活が営まれているとすれば、広くは大統領と国民との関係、狭くは、親子、夫婦、雇主対被雇人の関係に至るまで、何等かの形式を通じて、これ等根本の性格に帰着するのは、自明な事実ではありませんでしょうか・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・この精神的影響の上に数万円のハガキ代と、運動費、夥しい労力の消耗との結果、新たに八つの俗地が提灯持ち的に紹介されるに過ぎず、結局日日新聞の広告が全国的に最も有効に行われた事実に帰着するのみだとすると、抜け目なき脳味噌よ、悪魔に喰われろ、と云・・・ 宮本百合子 「夏遠き山」
・・・も配給をましにしようと思えば、謂わば藷一つも必要なだけ欲しいと思うならば、それはとりも直さず、藷が道理に叶った筋を辿って、村から各自の台所へと運ばれ得る条件を自分たちで作らなければならないということに帰着する。これこそ、私たち人民が、人民の・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・しかし僕の遠望観は、ぐるぐると回っている内に、結局この問題に帰着するのである。 何人も気がつくごとく、ここに陳列せられた洋画は主として写生画である。どの流派を追い、どの筆法を利用するにしても、要するに洋画家の目ざすところは、目前に横たわ・・・ 和辻哲郎 「院展遠望」
・・・ ――結局僕が Genumensch で、君がそうでない、ということに帰着するんだな。 この Genumenschという言葉を、木下は誇らしく発音した。そうでないと言われるのが自分には不満に感じられたほどに。でその時はこういう結論で・・・ 和辻哲郎 「享楽人」
・・・ そこで問題は、その対象の生命にピタリと相応ずるような生命を自己の内に経験し得るかどうかに帰着して来る。 感受性が鋭く、内生が豊富で、象徴を解する強い直覚力を豊かに獲得しているものはさまざまな対象の生命の動きを自己の内に深く感じ得る・・・ 和辻哲郎 「「自然」を深めよ」
出典:青空文庫