・・・作者は、取扱おうとしている現実にはよく通じているのであるけれども、作品での構成は、規模の大きい割にルーズであり、平板であり、筆致もやや粗いのは遺憾である。このために、中国の生活の推移を語る莫莫やキータの性格や行動が漠然としてしまっている。軍・・・ 宮本百合子 「「揚子江」」
・・・そのものがそうであるようにそれぞれの人物の特徴のある動き、ふん囲気をとおし、かたまったり散ったり、考えたり行動したりする人間と歴史のからみ合いの中に盛り上げられてゆく面白さこそ、リアルであって、しかも平板な現実の一片ではない文学の味である。・・・ 宮本百合子 「『労働戦線』小説選後評」
・・・ この画もまた川端氏の画と同じく遠のいて見る時に平板に感ぜられる。画面の前二尺か三尺のところに立つ時、初めて画家の努力が残りなく眼にはいって来るのである。これはおそらく絵の具の関係であろう。もしくはこの絵の具を写実に使う習練の不足による・・・ 和辻哲郎 「院展日本画所感」
出典:青空文庫