・・・の問題として理論的にもかなりたびたび取り扱われたもので、工学上にもいろいろの応用のあるのはもちろんであるが、また一方では、平行山脈の生成の説明に適用されたり、また毛色の変わった例としては、生物の細胞組織が最初の空洞球状の原形からだんだんと皺・・・ 寺田寅彦 「自然界の縞模様」
・・・ 青白い刃が垂直に平行して密生した芝の針葉の影に動くたびにザックザックと気持ちのいい音と手ごたえがした。葉は根もとを切られてもやはり隣どうしもたれ合って密生したままに直立している。その底をくぐって進んで行く鋏の律動につれてムクムクと動い・・・ 寺田寅彦 「芝刈り」
・・・十九日の晩ちょうど台湾の東方に達した頃から針路を東北に転じて二十日の朝頃からは琉球列島にほぼ平行して進み出した。それと同時に進行速度がだんだんに大きくなり中心の深度が増して来た。二十一日の早朝に中心が室戸岬附近に上陸する頃には颱風として可能・・・ 寺田寅彦 「颱風雑俎」
・・・あったので、いわば、子供の時から有る一種の芸術上の趣味が、露文学に依って油をさされて自然に発展して来たので、それと一方、志士肌の齎した慷慨熱――この二つの傾向が、当初のうちはどちらに傾くともなく、殆ど平行して進んでいた。が、漸く帝国主義の熱・・・ 二葉亭四迷 「予が半生の懺悔」
・・・そして、それと平行して、この第三集にあつめられた「小村淡彩」「一太と母」「帆」「街」などをも書いた。 一九四七年九月〔一九四七年十月〕 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第三巻)」
・・・描こうとする現実と平行に走っているような筆致と、現実に真直うちあたって行って描写している部分とが二様にまじりあってこの作品の中に際だっている。松下夫妻の故郷で行われる祝典のいきさつ、それに加わる松下夫婦の生活を語っている部分などは、作者が対・・・ 宮本百合子 「落ちたままのネジ」
・・・ 五 小道を下って、本通りに待っている自動車に乗り、蹄形に来た道と油田をかこんで平行しているコンクリート道路を暫く行った。その道は矢張り真直で人気なく、左右は古びた板塀とその中に突立っている無数の汲出櫓ばか・・・ 宮本百合子 「石油の都バクーへ」
出典:青空文庫