・・・ 二 ツァウォツキイは十六年間浄火の中にいた。浄火と云うものは燃えているものだと云うのは、大の虚報である。浄火は本当の火ではない。極明るい、薔薇色の光線である。人間を長い間その中に据わらせておいて、悪い性質を抜け出さ・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「破落戸の昇天」
・・・私は三年間芝居をしないでいた事がありました。芝居をするのはほかの事がしたいからです。思うようになるなら私は船の中に住んでいて人間の世界に近寄りたくないと思います。 デュウゼは薔薇の花を造りながら、田舎の別荘で肺病を養っている。僕はど・・・ 和辻哲郎 「エレオノラ・デュウゼ」
出典:青空文庫