・・・ 使 さあ、年限はかまわないのですが、――しかしあなたをつれて行かなければ代りが一人入るのです。あなたと同じ年頃の、…… 小町 (興奮では誰でもつれて行って下さい。わたしの召使いの女の中にも、同じ年の女は二三人います。阿漕でも小松で・・・ 芥川竜之介 「二人小町」
・・・百年の経験を十年で上滑りもせずやりとげようとするならば年限が十分一に縮まるだけわが活力は十倍に増さなければならんのは算術の初歩を心得たものさえ容易く首肯するところである。これは学問を例に御話をするのが一番早分りである。西洋の新らしい説などを・・・ 夏目漱石 「現代日本の開化」
・・・うに引張り出す、不平なるは力を出して上からウンと押して見るとギーと鳴る事なり、伏して惟れば関節が弛んで油気がなくなった老朽の自転車に万里の波濤を超えて遥々と逢いに来たようなものである、自転車屋には恩給年限がないのか知らんとちょっと不審を起し・・・ 夏目漱石 「自転車日記」
・・・ 証書を反古にするつもりで年限などを忘れさせる様にしとるんや。 東京の方へも云うてやって、委任状もろうて、証書の書き換えをさせんならん。 なあ栄蔵はん、 この村も、金臭くなって仕舞うた。 はたして、もう一寸の間で、証・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
・・・国史のようなものがこれ迄より重視されることも意味はあるだろうけれども、数学・理科をより軽く見る傾きが極端になれば、それは過ぎたるは及ばずにもなる。年限の永さが教育の実質の高さを直接に証明するものでないことを常識は知りぬいていると思う。知育偏・・・ 宮本百合子 「国民学校への過程」
・・・日本では年々労働にしたがう若い女のひとの数は殖えており、先日それぞれの道の専門家が新聞で語っていたとおり、大衆の経済事情が近頃わるくなって来たにつれ、若い婦人の就業年限がのびて、婚期もおくれて来ているのが、今日の実際である。昔から、婦人の犯・・・ 宮本百合子 「職業婦人に生理休暇を!」
・・・民主日本建設のために人民一般の知能水準の向上のために義務教育の年限を長くしなければならないとされ、文部省は六・三制ということをきめた。九年の義務教育と云わず六年と三年を分けて六・三制と考えている。何故一まとめに九年制といわないのだろうか。九・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・国全体が働く者によって働くものの幸福を真先に考えつくられているから、或る年限真面目に働けば年とって独立に暮らせるだけの扶助料を国家が出してくれます。働いていたお父さんが死んだ場合、お母さんへの扶助料は出ます。 集団農場では、兵役に行って・・・ 宮本百合子 「「我らの誌上相談」」
出典:青空文庫